第8話 冒険者ギルド
ーー リンカーンの街のギルド 2
夕方頃、ギルドに着いた。
するとアイが、
「カムイ様。その首の後ろに提げているのは何でしょうか?」
と、声をかけてきた。
僕は、地球で言うところのパーカーを着ていて。首の後ろの袋状の部分に月虹(ゲッコウ)を入れていたのだが、それが気になっていたようだ。
「ああこれね。僕はその部分からゲッコウを取り出すと、古竜の生まれ変わりだ。名は「ゲッコウ」一緒の仲間だからよろしくね。」
と言うと皆平伏して拝み出した。
「皆何してるんだ?」
僕の質問にフユーリーが
「古竜様と言えば、女神の次に尊い方。」
それ以上は言葉にできないようだったので。
「気にしなくていいんだよ。今は僕のペットみたいなもんだから。」
と言いながらまた袋に入れてギルドの中に入っていった。
◇
ギルドの受付にて。
別の意味で緊張している5人を連れて
「魔物の買取をお願いしたい。かなり多いので。」
と言うと受付嬢のセラーヌ嬢が。
「裏の解体場で、お願いします。」
と声かけられ移動するが僕の背中に強い視線を感じる。
解体場で
「かなり大物を仕留めたんだが、どのくらい捌けるんだ?」
と聞くと、職員と思われる男が
「お前らの物なら全部処理しても余裕だ。」
と嘯くので、僕はニヤリとしながら次々に出し始めた。
ワイバーンを3体出して、次にサイクロプスを5体出したところで男の悲鳴が聞こえてきたが、無視しながら大蛇8匹に大蜘蛛5体さらに・・・出そうとしたらギルマスが飛んできた。
「お前何してるんだ!」
と僕を叱りつけるので、無視しながらさらに魔物を取り出そうとすると
「聞こえてるのかガキが!」
とさらに怒鳴りつけたことから。僕は威圧を込めて睨み返す。
威圧に身体を硬直させるギルマスに近づきながら
「今貴方は誰にそんな物言いをしているんですか?僕は全部出せと言われてその通りにしているだけですよ。」
と答えるとギルマスが
「分かったから・・・威圧を抑えろ。」
と言うので威圧を抑えると座り込みながらギルマスが。職員に
「そんな事本当に言ったのか?」
と聞くと職員は激しく頷きながら
「まさかこんな大物だと思わず・・・。」
と答えた。それを聞いたギルマスは
「俺が早とちりをした。悪かった。」
と謝ったが僕は。
「言葉は大切ですよ。今回は大物だと言った僕の言葉を無視して、「全部出せと」と言われたので全部出します。」
と言い切りさらに大型の魔物を出してゆくと納めきれなくなったとこでやめた。
「これ以上は置くとこも無いので止めますが、覚えていてくださいよ。」
といいながらギルドの中に戻った。
しばらく、ギルド内で待っていると。
セラーヌ嬢が申し訳ない顔で
「先程は失礼しました。数を数えることもままならないようで、明日もう一度来てもらっていいですか?」
と言うのでギルドを後にした。
◇
宿「泊まり木」にて。
ギルドからの帰りもずっと5人は僕の背中の膨らみを凝視しているので。
宿の部屋に入る前に
「見たいなら付いてきなさい。」
と言いながら部屋の戸を開けると、皆雪崩れ込むように入ってきた。
「そんなに古竜が珍しいのか」
と言いながら僕は、背中からゲッコウを取り出し目の前のベッドの上に置いた。
ゲッコウは、1日のほとんどを寝ている状態で魔力を与える時だけ目を覚まして動き回るのが日課だ。
今日も魔力を手からゲッコウの背中に流すと、気持ちよさそうに目を細めジッとしている。
それを見ていた皆は、目をキラキラとしながら見つめていた。
魔力を与えるのをやめるとゲッコウがモゾモゾと動き出して皆の姿を見回した。
すると目が合うたびに彼女らは名前を叫び頭を下げていった。
皆が頭を下げ終わるとゲッコウが念話で
「私はゲッコウ。よろしく頼む。」
と皆に伝えると、彼女らは驚きながら平伏して
「「「「「こちらこそよろしくお願いします。」」」」」
と答えていた。
この世界の古竜の人気を改めて確認した時だった。
ーー 旅の供の紹介
アリエル 15歳 猫人族 レベル 60
身長155cm しなやかなスレンダー 猫耳と尻尾が茶色
好きな物〜甘いものと魚
武器〜ショートソード
② アイ 14歳 白狼族 レベル 70
身長170cm ナイスボディ 耳と長い尻尾と髪の毛が真っ白い
好きな物〜甘いのもと肉
武器〜長剣
③ ドンガ 50歳(見た目は15歳) ドワーフ レベル59
身長150cm 子供体型
好きな物〜酒
武器〜大楯とメイス
④ フユーリー ?歳(見た目は20歳) エルフ レベル85
身長160cm とてもスレンダー 耳が長い 冷たく整った顔
好きな物〜甘いものとミルク
武器〜弓と魔法
⑤ ギンジー 16歳 リザード族 レベル70
身長175cm 筋肉美人 肌の所々に水色のウロコ
好きな物〜酒と甘いもの
武器〜槍と拳
⑥ ゲッコウ 0歳 古竜 レベル1
身長50cm 瑠璃色の鱗 頭に短い角が2本
好きな物〜カムイの魔力
武器〜?
これが今僕のお供をしている物達の特徴だ。
当然人の姿に変化している時は、耳や尻尾が消えるが体格や髪色はそのままだ。
最近の魔物狩りで皆10レベルずつ上がっている。
ギルドランクもCランクになった。
ーー 旅を続ける
みんなのレベルが向上したことから、旅を続ける事にした。
目指すはゼンブラ王国の王都ゼン。
リンカーンの街から王都までは馬車で20日の距離。
今回商人の王都への移動警護を受けての旅である。
商人は周辺国に支店を持つ大商人「ケルビン商会」の副会長率いる商隊で、馬車20台の大規模編成である。
冒険者についても20人からの混成で、リーダーはAランクパーティー「英雄に至る道」のリーダーケンである。
あの時にボコった3人組だ。そのためか僕らには何も指示をしない。
警護任務の旅は順調に進むと見られたが、世情不安が旅の安全を脅かしているようだ。
盗賊や兵士の横行が目立つようになり、旅人さえ狙われ始めた。
そんな折、大商会の車列がお宝を積んでの移動。
これを狙わない盗賊らはいないだろう。
最近勢力を伸ばしてきた盗賊団「闇夜の鴉」と呼ばれる盗賊団が、亜人狩りが出来ずに盗賊家業に力を注いでいたのだ。
◇
出発から10日目。
旅も中盤、山沿いの峠を通過すれば後は大きな街が続く。
その峠を根城に待っていたのが闇夜の鴉だ。
僕はかなり前からその存在には気づいていた。彼女らにも注意を促して警護任務を経験してもらおうと考えていた。
盗賊団の数はやく100名。そこそこの装備を持ち、待ち伏せしているようだ。
僕の対応としては、彼女らの経験値を稼ぐ事が主な目的で。それ以外について力を出す気はあまり無い。
この世界の人族には悪いが、僕は亜人の保護と復権を依頼されているもので、人族の平和を頼まれたものでは無いからだ。
◇
峠に差し掛かったところで、突然岩が上から落ちてきた。
先ずは、後方に落とされ逃げ場を断たれると。前方にも丸太などが転がされ、馬車の進行を塞がれた。
警護リーダーのケンは、冒険者に的確に指示を出しながら馬車を守り始めたが、多勢に無勢で荷物を諦めて商人の保護にシフトし始めた。
アリエル達も自分達の受け持った荷馬車と商人の安全を守っていたが他の馬車が手薄になり始め、今後の動きに迷いがで始めた。
僕はそこで
「先ず何を第一に守るかを考えよう。」
と言いつつ、受け持った荷馬車を収納で収納すると。
「商人らを守りながら先に逃げなさい。」
と指示した。
盗賊らは、荷馬車の半分が突然消えた事に戸惑ったが、残りの荷馬車を抑えたり、逃げる商人達を追いかけたりし始めた。
僕はその様子を見ながら、荷馬車を鹵獲した盗賊に近づくと1人ずつ首を刎ねて行った。
その事に気づいた盗賊が
「おい!ここに強えガキがいるぞ。皆囲んで殺せ。」
と叫ぶと僕の元に30人ほどの盗賊が押しかけてきた。
僕としては相手から近づいてくるので、触れるものから首を刎ね続けると。
20人ほど切り殺したところで、盗賊らが逃げ始めた。
「雷撃」僕の呟きと共に周辺の盗賊が黒焦げになって倒れる。
その音と異様な状況に、初めて気づいた盗賊のカシラが
「弓で射殺せ!」
と叫ぶと一斉に矢が飛んできたが僕の火魔法に全てが焼き消える。
「お前らの逃げるぞ」
あまりの強さに危険を感じたカシラがそう叫んだが間に合わず。
「ドドーン」
と言う落雷の連続攻撃で目に見える盗賊は生きていなかった。
僕は荷馬車を全て収納すると馬を連れて峠を登り先に逃げた、商人らを追いかけた。
商人らを追いかけた盗賊は約40人。
しんがりを務める、アリエル達にことごとく倒され、すでに10数人が残るだけになっていた。
「おい、引き上げるぞ。」
盗賊が引き上げようと後ろを向いたところで、僕の姿を見た。
1人悠然と歩いてくる僕の姿に危険を感じた盗賊らは八方に逃げようと試みたが僕の雷撃から逃げる事はできず。
残らず黒焦げと化した。
商人のリチャードさんが
「危ないところありがとうございます。荷は諦めます気持ちがあっただけでも儲けものです。」
と言うので、
「勘違いしないでください。僕は仕事はきちんとこなしますよ。」
と言いながら、次々に荷馬車を取り出した。
馬を繋ぎ直しながらリチャードさんは、警護リーダーのケンから報告を受けたようで。
「ありがとうございます。」
と言いながら僕に鑑札のようなものを手渡した。
どうやらこれは、特別な客に渡している物のようだ。有り難く頂戴した。
その後は特に問題はなく移動を続け、予定通りに王都ゼンに着いた。
王都内のギルドとケビン商会の本店に分かれて、荷物の搬入と報告が済むと依頼は完了した。
僕らは宿を探して王都に繰り出した。
「ここが良さそうです。」
ドンガがそう言う宿を見ると、「酒の蔵」と言う名の宿だった。
特に当てのない僕らはそこを宿にする為、中に入り声をかけた。
「はいお待ちください」
店の奥から明るい声が聞こえると、1人の女性が姿を現した。
ドンガと同じような小柄な女性だ。
するとドンガを見ながら、
「ドワーフね。」と言いながら口に指を当ててウインクして、宿長を差し出した。
ドワーフ族は、鍛治や酒造りで有名で人族の中でも特に偏見を持たれずに生活できるようだ。
宿に部屋を3つ取り荷物を下ろす事になったが、この宿の推しは「うまい料理と酒」だった。
他の客も殆どがドワーフのようで、人族が泊まる事は少ないようだ。
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