第2話 異世界暮らし

ーー この世界の暮らし


村に入ると村は大小30ほどの家というか小屋が建てられ、周りを木製の柵で囲われていた。

一つの小屋に案内され中に入ると奥のベット(粗末な寝床)に女性が寝ていた。

少女は駆け寄り声をかける

 「ママ、薬草を見つけたの。お薬作るね。」

という少女に力なく微笑む女性。その様子を見ていると頭にメッセージが

 [『診察』しますかそれとも『治療』しますか。]

と。また謎のスキルのようだが僕が獣医だったからの影響か。


少女に近づき声をかける

 「僕は医者の心得があります。お母さんを診ても良いですか?」

と言うとそれを聞いていた少女と父親が

 「え!是非診てくれ(ください)。」

と答えるので女性に近づき自己紹介しながらスキルで脈や目喉呼吸を確認していく。すると『診断』と言うとメッセージで「カラクリ病」と出る。

これは猫族特有の風土病で致死率80%の病だ。このままでは女性は数日中に亡くなるだろう。スキル『治療』を使ってみる。


 僕の手から魔力が抜ける感覚とともに女性の身体が光に包まれる。

光が収まるとスキルで診る。『衰弱強』が『衰弱小』と表示されて心臓横の病巣はない治療できたようだ。その様子を不安に見つめていた2人に振り向き。

 「もう大丈夫です。病巣はなくなり完治しました。ただ衰弱していますので栄養のあるものを食べさせてください。」

と伝えると3人で泣きながら抱き合って喜び合っていた。


僕のステータスに

 治療魔法(診察・診断・治療)3

が加わっていた。


その後はお礼と言われ食事と宿を当てがわれた。

笑い合う3人は本当に嬉しそうだった。そして父親が手足に麻痺があるのに気づいた。

毒を持つ蛇に強い麻痺毒を与えられ、その後遺症が今でも残って思い通りに動かないため狩りも十分にできないと言っていたので、治療魔法を行うとすっかり健康体に戻った。


母親の病だけではなく父親の麻痺まで治した僕に家族は、深く感謝しいつまでもここにいて良いと言ってくれた。

暖かい家族愛を見て僕は女神の依頼をこなすことを心に決め始めていた。


アリエルの家族が病気や怪我が治してもらったと言う話は、すぐに村中に伝わり次の日には村中の怪我人や病人が僕の元に現れた。

僕はその村人を全て治してあげた。




ーー アリエル


 今日はなんて日なんだろう。

魔物に捕まった時にはもう家族に会えないと諦めていたと言うのに。

私の前に現れた人族の男の子が、ママの病をそしてパパの怪我をすっかり治してくれた。

ママの病気が不治の病でもう長くないことは、パパから聞いて知っていた。ただ痛みを除く薬草を飲ませてあげたくて。

それなのに完治させてもらえるなんて。しかもパパの手足の麻痺まで。


彼は彼が言うように女神様の使徒様なのだろう。伝承の勇者なのだと心から私は思い、この恩を返すためにある決意をした。



ーー アリエルの父カサエル


 今日娘のアリエルの姿が朝から見えないことに不安を感じていた。

夕刻になっても帰ってこない。悪い予感がするしかし手足の不自由な俺は森に入って娘を探しれやれない。

そんな思いで村の入り口でヤキモキしていると娘が同じ歳ぐらいの男の子と帰ってきた。

怪我もないようだが娘が言うに「魔物にさらわれた時にこの男の子に助けられたようで、男の子は遠くの国から1人で旅をして森で迷子になった。」と言う。しかし俺には違和感が拭えなかった。


匂いがしないのだ。猫人族のいやそれ以外の匂いさえも。人なのかすら分からないが危害を加える気配はない。

娘を助けてと言うこともあり自分の家で注意して見ていようと思い家に連れて行った。

家の中には不治の病に侵された妻が1人。アリエルが駆け寄り「薬草を取ってきた」と言いつつ空元気で薬を作り始めた。

すると少年は「医者の心得があるので」と言って妻を診せてくれと言う。

藁をもすがりたい私たちは二つ返事で了承しその様子を見ていると。妻が光に包まれ光が消えると安らかな寝顔の妻の姿がそこにあった。


少年が言うには病気は完治したと。あの不治の病を治せるなんて聞いたこともない。しかもその後長年不自由していた俺の手足さえ完治してくれた。

俺は思い違いしていた。匂いを持たない怪しい少年ではなく、何にも染まらない高位の存在。この森で言えば神獣かドラゴンの如き存在。ひょっとするとそれ以上の・・・。



ーー アリエルの母メアリー


 私は猫人族特有の不治の病にかかりもう数日の命と覚悟していた。

ただ一人娘のアリエルが不憫でそれだけが気がかりでした。

夫のカサエルも数年前の狩りの際、毒を浴び手足が麻痺する後遺症で思うように動けない。

こんな状態で私が死ねば残された2人に大きな負担をかけることは予想できた。


本日も、娘は危険な森に痛み止めの薬草を探しに入ったようで、夫の心配がよく分かった。

でも夕方帰って来た2人に娘と同じくらいの男の子がついて来ていました。私は猫人族には珍しく魔力がそこそこ有り魔力を見ることができるのです。私が見た男の子は光のしかも虹色の光に溢れる少年でした。


突然その子が私を診たいと言い出しその後治療をすると言い出しましたが。その光は私を暖かく包み、今までなくなる事の無かった全身の痛みを残らず取り去ったのです。

その後いつの間にか眠ってしまった私は、目を覚ますとその少年が夫の怪我を治すところでした。その色は蒼く全てを浄化するような色でした。

その時私は子供の頃から聞かされていた

 『遠い世界から勇者が来るよ。私達を襲うあらゆる脅威と恐怖を無くすために。勇者は言うよ、皆んなおんなじ人間だ、個性じゃないか力を合わせよう。勇者は行うよ、皆んなで本当の正義を。』

この言葉はこの深淵の森のどこかわからないが遺跡に残された言葉と聞いている。


あの少年はその勇者かもしれないと私は思い。そして娘の旅立ちを予感した。




ーー 使徒の仕事とは?



村人全てを治療してから僕の自由度は断然上がった。

森に行こうとすると誰彼かが護衛と言いつつ付いてくる。

何かをしようとすれば手助けと言ってたくさんの村人が参加してくる。

聞いていると不自由に聞こえるかもしれないが、それが全くストレスがない。


村の中に井戸がなかった。

どこか井戸を掘る場所がないかと村内を歩いていると、青い小人がある場所を指差してくる。

どうもその小人の姿は他の村人には見えないようで僕だけが見えている。

穴を掘るには道具かそれを行える魔法が必要だがと考えていると、穴を掘ろうとした地面から茶色の小人が現れ穴を掘る仕草をするので、お願いと手を合わせると。あっという間に直径1mで水脈までの縦穴が掘られ周りが石積みになっていた。


しばらく穴の底を覗いていると、青い小人が穴の奥底に飛び込みその代わりに綺麗な水が溢れんばかりに穴を満たし始めた。

村人に声かけし滑車をつける柱を設置し、水を汲む桶とロープを滑車に取り付けて井戸を完成させた。村人は非常に喜び早速水汲みが始まった。


僕は鑑定の魔法を使って周囲の状況を鑑定する。

山には有用な鉱石がたくさん眠っている。

村の生活水準が低いのは一つに安定した食料がない。一つには市場でお金になる品物がないので品物が買えない事が挙げられる。


畑はあるが土を豊かにする術を知らず、作物も種類が少ないので年々石高が下がり凶作の年は食料問題に発展する。

近くの山に鉄鉱石から金銀の鉱脈まで色々な鉱物が埋まっているのだが、その場所や掘る手段を持たないため手付かずである。


そこで森の中を回り。栽培できる食料を集め。さらに畑を肥やす肥し作りを行った。

芋類が多く見つかり、保存と乾燥に強い芋を何種類か植えさせ落ち葉などの堆肥を掘り運び、畑に混ぜて土づくりを進めた。


村の数少ない鍛冶屋に鍬やスコップ、ツルハシを作成させ。竹を並べて山から村までトロッコ用の道を作った。

重いトロッコも丈夫でツルツルした竹の道では少ない力で大量に鉱石が運搬でき貴重な産業となった。


山で鉱物以外に岩塩の地層も見つかり、交易品の一つとなった。

森の中には香辛料の木もあり、更に砂糖の原料のサトウキビやてん菜までなんでもこの森には生えている。

このような植生に誰かの意図を感じた。


塩や砂糖・香辛料が揃えば後は味噌醤油とマヨネーズである。

作物も麦や小麦のほか米も見つけ、作付け始めている。

村の規模も大きくなることを想定し、森を切り開き拡張。

木材を同じ長さに揃えて規格を統一し、地球の知識を使い漆喰、焼き杉に瓦屋根。

ベットのために羊毛と羽毛を採取し、蜘蛛の魔物から不思議糸を採取し機織り木を作り、布を織り、糸をと針を作り、布団作り、窯を作り、陶器と煉瓦を焼き、竹や細木を穴に埋め焼きながら炭を作る。


木の皮を剥ぎ叩き濾してノリを混ぜて紙を梳く。

不思議魔物であるスライムを紙に塗り乾かすと何故か耐火及び耐水性の紙が完成。

ガラスを作るため岩塩の地層の近くを掘ると、酸化ナトリュウムの塊を発見。

これはガラスの原料のみならず石鹸などの製造に使われる原料である。

ある日の夕方蝙蝠が飛ぶのを見つけ村人に蝙蝠の巣がある洞窟を聞くと、意外に近くに大きな巣があると言う。

直ぐに大量の硝酸を回収した、これは火薬などの原料になる。


石灰を探すため海を確認すると南に見える山の向こう側に海があると言う情報を得た。

するとこの辺りも昔は海の可能性があると思い掘ってみると、貝殻の化石などが出てきた。

明日にでも海を見に行こう。


透明度は低いがガラス窓が完成した。障子、襖作り後は畳かな、と思いながら現代日本に近い建築物を作り上げた。

靴を脱ぐと言う生活を知らなかった村人に地べたでもなくフローリングや畳敷きの室内環境で寛ぐことを教えると布団とともに流行となった。


生活水準の向上と亜人と呼ばれる人種の擁護と世界平和が使徒の使命?

と思いながら1年ほどこの村で過ごしていた頃。

村が豊になり交易で名が売れ始めると、移民と悪意を持つ人族の貴族の侵攻が始まった。



ーー 人族の貴族、兵隊との遭遇そして・・・欲望の果てに


ここに来て丁度一年、村もいつの間にか移民が増え街の規模にそこで村長が

 「この村の名前を付けてくれんかの」

と言って来たのだ。僕が名付け!それならこの世界の言葉で

 「オムニバス(共存)はどうかな?」

と言うと、

 「オムニバス。伝承の街の名前ですな良いですねそれにしましょう。」

と帰っていった、『伝承の街の名』て何。


その次の日、村の出入り口に看板が掲げられた『ようこそオムニバスに』と書かれてあった。


それから10日ほどして出入りの商人がある話をしていた。

 「ここから10日ほどの距離にある人族の街の領主が、私兵を集めこの村を占領しに来るようだと噂が出ていたぞ。しばらくここを離れていたほうがいいかもしれんぞ。」

などと不穏なはなしをしていた。

確かに豊かな村が近くにあり何処にも税金を払っていなければ、自分の物にしたがるバカが出てもおかしくないか。チョット調べてみるか。


村にくる商人らに話を聞きながら周辺の状況を確認すると、


 ・ここから一番近い人族の街は「カイマン」と言う

 ・カイマンの領主は辺境伯でここ数年悪天候で食糧難である

 ・人族は何処にも所属していない獣人の集落を武力で占領するのは当然

  と考えている

 ・この深淵の森に接する人族の国は三つで一つは純血種至上主義国の

  「ゼンブラ王国」、一つは宗教国家「アリスト聖王国」、もう一つが

  獣人も住んでいるがあまり処遇が良くない「ドーゾン王国」だ


周辺国は全て獣人にあまり良くない感情か、とても良くない感情を持っていることになるか。

さらにカイマンの街の私兵500人を連れた辺境伯の跡取りがこの村に向かっており、後3日の距離のようだ。


僕は人族の姿に変化する

カムイ 11歳 男 人族(猫人族)  レベル2(30)

HP 5500 MP 7000   力 1550 速さ 1600 賢さ 2000

スキル

 成長促進  超回復  状態異常無効  肉体改編(全種) 鑑定全

 索敵7 隠行7 錬金術5 治癒魔法5 瞬間移動9 千里眼

 全属性魔法使用可能 精霊術4

ユニークスキル

 アイテムボックス  

称号 女神フローレアイの使徒 


これが今の僕のステータス。

瞬間移動は転移の下位互換でmaxになれば転移魔法にステップアップしそうな魔法である。現在は見える範囲まで移動できるが千里眼があるのでその距離はほんと千里あるかも。


千里眼で兵隊たちの位置を確認。

深淵の森の奥に住むワイバーンを挑発しながら森の外に誘い出す。

後は兵隊たちの方向にわざとらしく挑発しながら逃げると兵隊たちが見えたところで隠行で姿を消す。

目的を見失ったワイバーンは怒りのまま兵隊を見つけ襲いだすその数10匹。


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