第199話 大雪で歩道が消失

 午後三時。

 大雪のため、会社から帰宅指示が出ました。


 外は、猛雪です猛雪。

 大雪なんてもんじゃありません。

 朝にあった歩道が無くなっています。

 バスもアテにならないし、家まで徒歩二十五分の距離を歩くことにしました。


 いや、午前九時に「渋滞で遅れます」との同僚の電話があり、その時からヤバイと思っていましたが、とんでもなくヤバかった。


 歩道のあった場所に足を踏み出すと、膝下まで埋没。

 吹き付ける雪で、メガネも覆われます。

 

 横通りの歩道を避け、広い通りを進むことにしたましたが、真っ直ぐに歩けません。

 車の轍がデコボコで、その周囲に雪が降り積もって、段差が出来ています。

 段差は、十センチ以上あります。

 ヨタヨタ歩いていると、前方に車が見えてきました。

 電力会社の車が、車道で三台も停まっています。

 二台が動けなくなったようで、四名の男性がスコップで周囲を掘っています。


 その横を通り、曲がると横断歩道ですが、そこはどうにか歩けます。

 しかし横道に曲がると、また雪の沼。

 膝まで埋まりつつ、足を動かします。

 

 降雪は止まりません。

 

 やがて――家の近くのコンビニが見えて来た!

 と思ったら、雪の固まりにつまづいて、盛大に雪の中に突っ込みました。

 顔とメガネの間に雪が入り、メガネを外して雪かきです。

 どうにか立ち上がり、少し広い道に出て、トートバッグの中を調べます。

 スマホは雪まみれで、慌てて雪を払いました。


 ふと気づくと、真後ろに車がいました。

 向こうも、歩行者の私が動けなくなっていると思ったのか、クラクションも鳴らしません。

 運転手さん、迷惑を掛けて御免なさいです。


 いや、もう車道で立ち止まってはいけない、などの常識も頭から消えました。

 真面目に歩道を歩くのは危険です。

 五年ほど前の大雪の日に、誰もが車道の端を歩いていたのを思い出します。


 三十分以上かけて、ようやくマンションの我が家に辿り着きました。

 ああ、生きて帰れた……。


 このクソ雪がああああっ!

 命の危機を感じたじゃねえか!

 

 雪がヒドすぎるのか、夜になった今も、除雪車の音は聞こえません。

 明日の朝には、歩道は……復活してるかな。

 除雪車、来てくれえッ!

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