第196話 めまいで退勤したら、母が『めまい』を観ていた

 タイトル通りの話です。


 めまいを起こして、やむなく欠勤。

 目を覚ました途端に、天井が左から右に回っていたのです。


 こりゃ駄目だと思い、しかし職場に電話しようにも吐き気が酷くて喋れず。

 やむなく、母に電話をかけて貰うことに。

 ああ……母に欠席電話をかけて貰うのは、高校以来だよ……。


 そんな訳で。『カク』も『ヨム』も少し休むことにしました。

 疲れが溜まってたんだな……。



 そして翌日。

 めまいが少し収まったので出勤するも、やはり視界が定まらず昼食前に退勤。


 帰宅すると、母が放送していたヒッチコック監督の映画『めまい』を観ていました。

 が、テレビどころではないので自室で仮眠です。


 映画『めまい』は、以前の放送時に録画済みですし。

 あらすじは――


 ある事件で高所恐怖症になり、刑事を引退したジョン。

 そんな彼の元に旧友のエルスターが現れ、妻のマデリンを監視して欲しいと依頼されます。

 マデリンは、夭逝した祖母カルロッタへの想いに取り憑かれ、自死願望があるとのこと。


 依頼を引き受けたジョンは、密かにマデリンを見て、その美貌の虜になってしまいます。

 そして尾行中、川に飛び降りたマデリンを助けるジョン。

 その後も二人は密会するも、マデリンは教会の鐘楼から飛び降りて死亡。

 高所恐怖症のジョンは、鐘楼の階段を登れず、マデリンを救えなかったのです。


 傷心のジョンは、街をさまよい――

 ある時、マデリンに瓜二つの女性を見つけました。


 彼女の住むホテルに押し掛けると、その女性はジュディと名乗り、デパートの店員だと言います。

 髪色も髪型もメイクも違うジュディ。


 しかし、ジョンはジュディをディナーに誘い、ジュディも承諾しました。

 ディナーの後にジョンはジュディを家に送り届け、次のデートの約束を取り付けます。

 彼が去った後、ジュディはカバンを出し、洋服を詰め、街を出ようとします。

 その洋服の中には、マデリンが着ていたドレスもありました。


 ジュディはエルスターが見つけた、本物の妻に似た女性だったのです。

 マデリンの振りをしてジョンの前に現れ、ジョンを妻の自殺の証人に仕立て上げると言う、エルスターが企んだ殺人の共犯者だったのです。

 本物の妻はエルスターに殺害され、エルスターはジュディが鐘楼に駆け上がって来た時に、鐘楼から妻の遺体を投げ落としたのです。


 けれど本心からジョンを愛してしまったジュディは、街から離れることが出来ずに留まっていたのです……。


 

 つまり映画の三分の二あたりで、殺人とジュディの一人二役トリックが明かされる、制作当時としては異例の展開でした。

 

 晶文社刊『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』によると、スタッフの反対を押し切って、ヒッチコックはこの構成にしたとのことです。


 

 そして、ここからが重要なのです。

 

 ジュディと交際を始めたジョンは、ジュディにマデリンが着ていたのと似たドレスを着せ、茶髪を金髪に染めさせ、メイクも髪型も変えるように強要します。

 その姿は、恋に堕ちた男の狂気さえ感じさせます。


 しかし、ジョンは元刑事。

 ジュディの持ち物から真実を見抜き、犯罪への怒りと自分が騙された怒りを抑えられませんでした。

 彼は全てを失い、物語は終わります。


 映画で印象に残るキャラが、洋品店のマダム。

 ジョンはジュディを高級洋品店に連れて行き、マデリンが着ていたのと同じスーツを探します。

 注文の煩いジョンに店主のマダムが「イメージがおありなのですね」と引き気味に言います。

 

 このマダムの引き具合は、おそらく観客目線に立ったものでしょう。

 

 

『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』によれば、ジュディとマデリンを演じたキム・ノヴァクさんは『ジュディ役の時はブラジャーを付けていなかった』とか。

 御本人が、ブラジャー無しの胸を誇りにしていたとのことです。

 トリュフォー監督は、そのセクシーさを絶賛していました。


 うーむ、男性はそこを見ているのか……。

 私は、ジュディのレトロなファッションが素敵だと思いましたが。


 

 えー、体調も八割ほど元に戻りましたので、執筆を再開しました。

 今後とも、よろしくお願いいたします。

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