第182話 中国ドラマ『長歌行』の原作改変に驚く

 中国人漫画家さん原作の『長歌行』が本国でドラマ化。

 現在BSで放送中なので、たまに視聴しています。


 原作は2巻まで読みましたが、その改変ぶりに驚いたので、記録として書いて置きます。


 物語は、唐の公主『永寧姫』の復讐劇です。

 叔父『李世民』の反逆で両親を殺害された『永寧姫』こと『李長歌』は、男装して追手をかわしながら放浪。

 やがて朔州を治める公孫恒に気に入られ、軍師として仕えます。


 そこに青年『阿史那あしなしゅん』率いる遊牧民族の軍が現れ、籠城戦となります。


 ドラマは、この辺りの話を観ました。

 パッと目に付く改変は、『永寧姫』が『永寧郡主』と呼ばれていること。

 『郡主』は皇太子の娘のことなので、ここらはドラマ版が正しいでしょう。

 漫画版の『永寧姫』の訳は、日本人にも分かりやすいからでしょうか。

 

 『阿史那あしなしゅん』も『阿詩勒あしら隼』と名前が変更。

 調べたら、彼のモデルとなった人物は『李世民』に仕えていたそうです。

 彼は原作より早く登場し、サッカーもどきの競技に出て、『永寧郡主』と対戦したりしてます。


 原作は『永寧姫』の逃亡シーンから始まっており、ドラマ版も『永寧郡主』の逃亡シーンからですが、過去を遡る形で『永寧郡主』の宮廷生活も描かれています。


 この段階で登場人物が大幅に増え、政治的な駆け引きも描かれているのはドラマならではの改変でしょう。

 

 面白いのは、原作者描き下ろしの絵が挿入されるシーンがあること。

 水に落ちるシーンで何度か使われていますが、実写撮影より楽と云う理由なのか分かりません。

 合戦シーンでも同様の措置が取られていることがありますが、視覚効果を狙っての

漫画絵挿入のような気がします。

 


 で、先日に観たエピソードは、朔州籠城戦のシーンです。


 長歌に弟子入りした『とう』(ドラマ版では『阿竇あとう』)と云う名の少年がいます。

 原作では等身の低いキャラですが、ドラマ版では長歌よりも長身の少年です。

 大将軍ににるのが夢だ、と語っていました。

 

 阿竇あとうは敵の偵察で城から出ていた所を見つかって捕えられ、城の前に引き出されます。

 城壁から見降ろしていた長歌たちに、敵は「こいつを殺す」と脅します。


 しかし、阿竇あとうは微笑みながら、長歌に拝礼を繰り返します。


 長歌は部下たちに言います。

「命乞いをしているのではない」と。


 阿竇あとうは敵に斬られて絶命し、怒った長歌たちの軍は城を出て突撃します。


 この突撃戦闘シーン、途中から漫画絵CGに変わります。

 長歌は敵兵を切り倒し、地面に倒れている阿竇あとうを見ました。



 ここで!


 私「阿竇あとうが七頭身ぐらいの美少年になってる!」


 ――ビックリです。

 漫画版の面影はありません!

 ドラマのための描き下ろし絵とは云え、原作時と絵柄が変わったとは云え、原作の面影が皆無です!


「あんた誰です?」状態です!

 壮絶に悲しい場面なのに、変なシャックリが込み上げて来ます!


 長歌は阿竇あとうに手を掛けた敵兵を倒し、敵は撤退。

 

 立派な墓に阿竇あとうは埋葬され、長歌と兵士たちは繰り返し唱和します。

阿竇あとう大将軍の凱旋を讃える!」と。


 ……泣けました。



 ちなみに原作のとうは、公孫恒の幼い娘と老師と共に城を脱出しています。

 思い切った改変に驚きましたが、漫画絵で美少年化した阿竇あとうに度肝を抜かれました。

 全四十九話と云う事なので、キャラを増やして大人の鑑賞にも耐えうる?改変を加えたのだと思います。

 

 阿竇あとうを退場させる必要があったかは分かりませんが、最期に大将軍となり、美少年として描かれたので本人?も満足でしょう、たぶん。

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