第158話 あかねさす 紫野行き標野行き
あかねさす
紫野行き標野行き
野守が見ずや
君が袖振る
万葉時代の歌人、額田王の有名な和歌です。
先日に投稿した『黄泉月の物語』第140話に、話の展開上やむを得ず、超お粗末な自作の和歌を載せましたが、参考にしたのが上に挙げた超素晴らしい歌。
詠み返す度に、何て力強い歌だろうと心が揺さぶられます。
『黄泉月の物語』の主人公たちの過去世編は平安朝が舞台ですが、参考にしている源氏物語の姫君たちの和歌に比べて、万葉の女性の強さを感じます。
その頃は、高貴な身分の女性が、野に立てた時代だったのですね。
平安時代の貴族の姫君は邸に籠もり、薄暗い中で過ごしていましたから。
源氏物語の『関谷』の巻では、光源氏はかつて契った人妻の空蝉と再会します。
逢坂の関で大勢の従者に囲まれて牛車に乗る光源氏は、道を譲ってくれた一行の女主人が空蝉と知っても、車から降りることは出来ません。
ただ、昔を偲んで
これが『もののあわれ』なのでしょうが、額田王の歌の強さと比べると何とも儚く映ります。
後に未亡人となった空蝉は出家し、光源氏の邸宅の一角で暮らします。
源氏の死後は、財産を分与されて尼寺に移ったかも知れませんが。
さて冒頭の和歌ですが――
額田王は紫野の狩りに同行し、かつての夫の大海人皇子が自分に袖を振って合図するのを諫めた歌で、狩りの後の宴会で詠んだそうです。
けれど額田王は、今は大海人皇子の兄、天智天皇の妻の一人。
その場に居た大海人皇子も返歌をしていますが――
憎くあらば 人妻ゆえに 我恋ひめやも
うーん……宴席の余興の歌だったとしても笑えねえ。
いや、万葉の人々は大らかだったのでしょうか。
でも源氏物語には女性の嫉妬も描かれているし、数百年で人間の恋心の有り様が変わるとも思えません。
史実では、後に天智天皇の皇子VS大海人皇子の戦いとなっちゃうし。
実は昔、従姉妹の家で里中満智子先生の『天上の虹』の一部を読んだことがあります。
おぽろげながら、上記の宴席シーンを読んだことも覚えています。
額田王が美しかったかな。
それよりも強烈だったのが、大海人皇子の息子の高市皇子?と柿本人麻呂とのBLシーン。
野原で、二人とも裸?でウニャモニャしてました。
何で、あんなシーンがあったんだろう???
うーん、読み返したくなってきたぞ!
品格ある和歌に始まり、BLライクで締める私らしい記事でした(;'∀')
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