第132話 映画『ベニスに死す』
先日、BSで放送していたので初視聴。
美少年タッジオを演じたビョルン・アンデルセンのポートレイトを見たことはあります。
二十世紀初頭のベニス。
熟年作曲家アッシェンバッハは、バカンスに訪れた高級リゾートホテルで、ポーランド人貴族の家族と遭遇。
美しい母親が率いる家族――その長男のタッジオに一目惚れしてしまいます。
ギリシャ彫刻を思わせる美貌の少年は、アッシェンバッハと擦れ違うと妖しげに微笑み、一方で母親には無邪気に微笑んだり。
しかしベニスにはコレラが蔓延し、白い消毒薬が撒かれます。
アッシェンバッハは若作りのために白化粧をし、浜辺のデッキチエアでタッジオを見つめながら息を引き取ります。
視聴した感想は、映像の美しさに尽きます。
イタリア公爵家の出身の監督作だけあり、調度品や衣装も素晴らしいです。
女性のドレスにはウットリ。
タッジオの母親役を演じたシルヴァーナ・マンガーノのスタイルの良さ!
そして、まさにギリシャ彫刻のような顔立ちのタッジオ。
台詞は殆ど無く、それが妖美さを引き立てています。
ただ……確かに美しいけど、大人っぽいんですよね。
ビョルン・アンデルセンは十五歳だったそうですが、貴族の子供が着たセーラー衿の白トップスを着るには、ちょっと……。
いや、セーラー衿上半身ならギリだけど、長身だし、全身が映るとキツイ。
ゆるめの白ボトムがなあ……。
黒スーツシーンは違和感なしでしたが。
アッシェンバッハを演じたダーク・ボガードも良い。
仕草や目線から、神経質で気難しい性格が伺えます。
回想シーンでの、友人作曲家との口論からもそれが分かります。
友人は「お前の音楽には官能が欠如している(だっけ)」と怒鳴りました。
そんな男が美少年に魂を砕かれ、彼とその家族を尾行とかヤバイです。
タッジオとその友人(青年っぽい)が水着姿で肩を組んで歩くのを嫉妬したり。
そんな彼が官能に酔いしれつつ、息を引き取るのは皮肉です。
何年か前に放送された舞台版も視聴しましたが、こちらのタッジオは成人が演じていました(当たり前だ)。
後ろ向きで全裸で立つシーンもあり、ちょっと驚きました。
でも御顔立ちはビョルン・アンデルセンを思わせ、ナイスキャスティングだと思いました。
セーラー服の少年?たちがボール遊びをするシーンもあったような。
ただ、後年に明かされた監督からアンドレセンへのセクハラの話を知ると、素直に楽しめないのも事実。
優れた映画だけに困ったもんです。
『作品に罪は無い』と云う言い回しもありますが、監督が出演者にセクハラ(撮影後か?)と云うケースを、どう見れば良いのか。
悩ましいところです。
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