第114話 桜餅の季節

 桜餅が好きです。

 塩漬けの桜の葉の匂いが、たまりません。

 

 しっとりした塩気の歯に包まれた、薄い桜色の餅菓子。

 桜の香り、餡の甘さ、塩味が混然一体となった春菓子。

 熱い緑茶をお供に食する……幸せ~♪



 ところで、東京に住んでいた頃。

 現地で初めて迎えた春に『桜餅』を見て驚愕しました。


 桜の葉は同じですが……

 何だ、この餃子の皮みたいな物に包まれた餡子は!?

 桜餅……これが桜餅なのか、と目を見張りました。

 確かに、パッケージには『桜餅』と記されています。


 そう、北海道で食される桜餅は、いわゆる『道明寺』。

 もち米を加工した『道明寺粉』で、餡子を包んだものだったのです。


 カルチャーショックです。

 しかも『道明寺』が売っていません!

 くるくる巻いた『桜餅』ばっかり!

 おーい、『道明寺』はどこ~??


 ……気を取り直し、辺りを見回します。

 ここは某百貨店の春のスイーツフェア会場なのです。

 動揺を隠しつつ一周しても、『道明寺』は在りません。


 止むを得ず、三個入りの税抜き九百円(お高い)『桜餅』を買って帰宅。

 冷蔵庫から緑茶のペットボトルを出し、箱を開封。

 初『桜餅』とコンニチワします。


 手に取り、じーっと眺め……パクリ。


 ……おいしい!

 皮のモチッとした歯ごたえ、美しい薄い小豆色のこし餡。

 うみゃみゃみゃみゃ~!

 あれよという間に、全て平らげました。

 これが東京の『桜餅』なんだ、と感激した春でした。

 


 その後の数年間は、その三個入りの『桜餅』が、春の贅沢スイーツになりました。

 もちろん、スーパーで買う『桜餅』も美味しくいただきました。



 今では、北海道でも皮で包む『桜餅』をたまに見かけます。

 けれど、圧倒的に『道明寺』が多いです。

 当然、こちらも好きです。

 餡子は粒あんもこし餡も好きですが、『桜餅』はこし餡、『道明寺』は粒あんが良いかな?


 うーん、つぶあんを変換すると『粒あん』、こしあんだと『こし餡』と出ますね。

 どちらも美味しいので良し、ですが。


 今は、『桜餅』も『道明寺』も通年食べられすが、やはり春に食べるのが格別。

 今年も、キティちゃんの雛ぬいぐるみを眺めつつ、『道明寺』をいただきます。


 巡る春は美しけり。

 

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