第96話 真冬の、何気ない一コマ

 雪が積もっている。

 ので、休みの日に知人宅の雪かきを手伝った。


 知人宅と云うより、亡き祖父の持ち家だった古い古い一軒家。

 浴室も無いが、だだっ広い。

 そこに、遠戚の高齢女性が独りで住んでいる。

 

 女性の甥っ子さんがたまに訪れるが、しばらく来れない。

 という訳で、いつぞや吹雪の日に買ったミニスコップを引き摺って雪かきに行って来た。


 徒歩で10分ほどの距離なので、ミニスコップは杖代わりに良い。

 道が凍っている時は役に立つ。


 苦も無く、家に到着。

 道中、我が家の周りの雪かきをしている人々と擦れ違う。

 

 一軒家にはガレージがあり、別の人に貸している。

 夏に『車庫貸します』の張り紙を見た男性から連絡があり、時間の都合上、私が下見に来た男性と会って貸すことを決めた。

 趣味のバイクを置きたいらしい。

 業務用のバンで下見に来ていて、名前と電話番号だけ聞き、こちらの振り込み先だけを伝えて鍵を預けた。

 

 何ともアバウトだが、祖父もこんなものだった。

 後で通帳を見て、振り込み相手が『○○歯科医院』で驚いた(○○は、貸した男性の名字)。

 

 家を訊ねると、遠戚の女性が出て来たが、すぐに雪かきを始める。

 大型のシャベルを借り、雪を傍の空きスペースに寄せる。

 奥には、半壊した木造家屋がある。

 借り手がトンズラした放置家屋だ。

 夏には横に洋式便器が積み上がっていたが、地主が撤去したらしい。

 

 この辺の情景は、拙作『黄泉比良よみひら荘の璃々子』第一話で描いた。

 日常の少し変わった情景は、創作のヒントになる。

 四話での黄泉比良よみひら荘に至る短い描写も、私の体験を元にしている。


 さて、30分程度で玄関周りの通り道を確保し、お茶と饅頭を頂き、帰途に着く。

 ミニスコップを持っていても、誰も気にしない。

 ボブスレーを引き摺っての買い物も珍しくないのが雪国だ。

 かくして、私の平凡な冬の一コマが記録された。



 おっと、日が変わってから『ツルネ』の続編が始まるじゃないですか。

 こりゃ、観ねば!

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