第82話 また、あの町にいる夢を見た

 昨夜に見た夢の話です。


 また、いつもの懐かしい場所。

 東京在住の頃に暮らしていたアパートが目の前にあります。

 しかし、二階に上がる外階段がありません。


 私の部屋は二階。

 これでは帰宅できません。


 外をウロウロしていると、一階に大きな玄関があります。

 実際のアパートには、無かった玄関です。

 玄関の引き戸を開けて中に入ると、住人たちが居ます。

 私の部屋は十畳ほどの大きさで、襖だけで仕切られています。

 部屋の中には、真っ白いフカフカの大きな布団が敷かれています。

 両親が、そこで寝ています。

 

 タンスもありますが、入りきらない洋服や小物類が畳の上に置いてあります。

 私は畳に座り、「引っ越しの荷物を運び出さなきゃ」と眺めていると……目が覚めました。


 

 ――数ヶ月に一度は、いつものアパートが夢に出て来ます。

 あのアパートは、もう無い筈です。

 都の道路拡張に引っ掛かり、住人は立ち退き、壊されたのですから。

 けれど今も私の記憶と夢の中で、あの場所に在り続けているのです。

 いつか私がこの世を去った時、あの場所は何処に行くのでしょうか?

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