第34話 詩情のディストピア小説「佇む人」

 忙しかったお盆も過ぎ、御先祖様もお帰りになったでしょうか。

 テレビ番組「美の壺」をチラッと観たら、各家を回って盆踊りを納める風習を紹介していました。

 その様子は、とても荘厳で美しく見えました。



 さて今日のお題は、筒井康隆氏の小説『佇む人』です。

 実は、この小説を読んだことがありません。

 小学生の頃に、ラジオドラマで聴いたのです。

 しかし、その生々しい情景は一種のトラウマとなり、今も忘れられません。


 思想統制された日本で、主人公の小説家は飄々と生きています。

 政府に逮捕された人々、犬や猫の末路を眺めながら、まだ「意識のある妻」を訪ねて、話をする……。

 聴いた時は「佇む人々」の様子を想像し、ゾッとしたのを覚えています。

 これを書くにあたり、あらすじを検索しましたが、やはり記憶のまま……。

 残酷で、少しばかりユーモラスで、詩的な作品です。

 星新一氏の作品はドラマ化されましたが、これを実写で見るのは耐えられないだろうな、とは思いますが。


 そして……これを書いていて、諸星大二郎氏の「生物都市」を思い出しました。

 あれも、一種のディストピアですよね。

 同化された人々は幸せなのかも知れませんが……。


 筒井康隆氏の作品を読み、よく覚えているのは『おれに関する噂』と『にぎやかな未来』と『お助け』かな。

 しかし『お助け』は、ジョジョ五部のディアボロ並みに救いのないラストです。

 『にぎやかな未来』は、ラストのアイロニカルな台詞が良い!

 情報溢れる現代には、刺さる台詞です。



 もう一つ。

 ブラッドベリ原作、トリュフォー監督の映画『華氏451』について。

 これもディストピアがテーマで、私は廉価版DVDを持っております。

 けっこう昔に、映画のラストシーンが観たくてポチりました。

 ちなみに、「華氏451」は、紙が発火する温度のことだとか。

 

 読書が禁止された未来、主人公の男は本を焼却する職に就いています。

 しかし、ある女性と知り合い、読書をする楽しみに目覚め……


 そして、本に書かれた内容を暗唱する人々が湖畔を交錯して歩くシーンがラスト。

 老人は書物を暗唱して聞かせ、孫はそれを覚えます。

 いつか、読書が許される未来のために。

 現代の映像と比較したら特撮レベルかも知れませんが、当時の風景やファッションは素敵です。

 映し出された風景は、貴重な記録ですし。



 私も『ディストピア小説』をいつか書いてみたいものです。

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