第10話 十二単着付け体験をした時のこと

 

 小学生の頃から、十二単(女房装束、と云う方が正しいか)に憧れていました。

 

 そして――中学生の頃だったでしょうか。

 十二単を着て、平安時代で暮らしている夢を見たことがあります。

 傍には、やはり十二単姿の母が居ました。

 案外、正夢だったのかも……と、今でも勝手に思い込んでいます。

 


 さて、もう三年余り前のこと。

 やはり、一度は十二単に袖を通してみたいもの。

 思い切って大枚を叩いて、『十二単の着付け体験』をしました。

 


 一ヵ月に予約し、張り切って行きました!

 必要な物は、白Tシャツ・白ソックス・膝丈レギンス、タオルなど。

 事前の「『平安風』と『江戸風』のどちらを選びますか?」のメッセに、迷わず『平安風』を選択!


 当日用意されていたのは『紅梅重ね』の十二単。

 紅梅色の唐衣に、ピンクを基調とした表着や袿を重ねるのです。

 写真を見ると、黄緑色の唐衣を着た方の写真もあったので、どっちの色が用意されてるか分からなかったのですが……お目当ての方が来ました!


 そして白塗り化粧をし、カツラを被り、着付け開始です。

 先生の他に、二人の方が着付けを手伝ってくださいます。


 着付けには、やはり一時間近く掛かりました。

 けっこう辛かったのが、カツラの重さです。

 衣装の重さよりも、肩にきました。

 

 着せ付けが終わり、鏡を見せていただくと……白塗りの顔が『バカ殿』を彷彿させますが、これでイイんですよね、先生???


 ……それは見なかったことにして、素晴らしい十二単を堪能しましょう。


 十二単の総重量は10キロ越えと言われていますが、意外と動けます。

 着てしまうと、重さが分散されるのでしょう。

 事前調査では『長袴は、軽く蹴るように歩くのと良い』と記されていたので、その通りにすると、つんのめることもありません。


 長い裾を引き摺るのも……何だか、『尻尾を引き摺って歩くゴジラ』が思い浮かびましたが、問題なし。


 写真撮影の時に渡された『檜扇』が結構重く、支えるのがちょっと大変でした。



 『黄泉月の物語』の63話、アトルシオが女性装束の着せられる場面。

 詳しくは描写しませんでしたが、この着付け体験を思い出して書きました。


 今から思えば、着付け体験の時に、もっと衣装を観察して置けば良かったと後悔しています。

 着ることばかり考えていて、生地をじっくり見る隙がなかったのが悔やまれます。


 

 そう言えば、昔は七段飾りの立派な雛人形が我が家にありました。

 亡き祖母が若い頃に、恋人からプレゼントされたそうです。

 

 そして、何年か前のこと。

 新聞の『お悔み欄』を見ていた母が、ボソッと言いました。


「この欄に載ってる人……おばあちゃんの恋人だった人と同じ名前だ」


 ……母は、その人の名前を憶えていたようです。

 私も、そのお雛様を覚えています。

 しかし引っ越しの際に、お人形屋さんに引き取っていただきました。

 人形供養をして、納めてくださるとのことでした。


 今は、縫いぐるみのお雛様を飾りますが……

 折に触れて、あの七段飾りの雛人形を思い出すのです。

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