第9話 仏像展にフラッと入った日の夜……それは起きた

 私自身が体験した不思議現象の話です。


 一時、私は東京の専門学校に通学していました。

 

 何の気なしに百貨店を歩いていると、たまたま『仏像展』をやっていました。

 特に信心深い訳でもなく、仏像に興味がある訳でもない……。

 なのに、なぜかフラッと入場券を買い、『仏像展』に入りました。


 展示されていた仏像を適当に眺めていると――ふと小さな仏像が目に入りました。

 手のひらに乗るサイズの、蓮の台座に座る小さな仏さまです。

 

 その時、なぜか入院中の祖父を思い浮かびました。

「こんな仏像を、祖父に買ってあげたいな……」


 唐突に、そう思いつつも、その場を離れて帰宅しました。



 そして夜――それは起きたのです。

 眠っていると、奇妙な感覚に目を覚ましました。

 おかしい。

 足が引っ張られている!

 両足の脛の中を薄布のようなモノが通り抜け、私の『何か』を引っ張ってます!

 引っ張られている『何か』が、私の『霊体』であることに気付くのに時間は掛かりませんでした。

 信じられないことですが、明らかに『霊体』が引っ張られていることを理解したのです。


「これはまずい!」

 焦った私は起き上がりました。

 一応、体は動くようです。

 立ち上がり、明かりを点けました。

 

 部屋の中には、当然ながら誰も居ません。

 異常はありません。

 動いたせいか、引っ張られる感覚は消えました。


 翌日も授業があるので、私は明かりを点けたまま――いつしか眠りに就きました。


 翌日はいつも通りに登校し、友人に昨夜のことを話し、冗談半分に「親戚の誰かが死ぬかも知れない」と言ったら……


 一週間後に、祖父が亡くなりました。

 

 後で父から聞いたのですが、冬休みに祖父のお見舞いに行った時に、祖父は食い入るように私を見ていたそうです。


 祖父の生霊が、私に会いたくて、訪れたのだと思っています。

 そもそも、有料の『仏像展』に入ったこと自体が変でした。

 何らかの導きがあったのでしょうか。

 どのような形にしろ、祖父が私に会えたのだとしたら――何とも言えない気持ちになります。

 


 と、ここで疑問です。

 祖父は、私の東京の住所は知りませんでした。

 しかし、私の住んでいたアパートに現れたなら……?

 

 心霊番組では『霊道』という『霊の通り道』なる言葉が示され、私も自身の小説で使っています。


 祖父は、そう云う『道』を通って、私に会いに来たのでしょうか?

 肉親同士の繋がりは、空間を容易く超えるのでしょうか?


 

 以前にも書いた、母が見た着物幼女とチロの幽霊?は、ともにキッチンの方角から現れています。

 母が怖くなかった幽霊?たちですが、やはりキッチンに『霊道』が存在したのかは知る由もありません。

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