第19話   ねーきゃーねーよーに

 え~タイトルに合わせましてここはひとつお経風に。 木魚がポクポク・・「ねーきゃーねーよーにぃ~ 」チィーン、と金の音・・ そして合掌。

あれれ、何ともばかなことで、ふざけて遊んでしまいました、あいスミマセン。


 この訳のわからないお呪いのようなものは、私の母がよく言っていた言葉なんですが、ちょいと通訳をさせて頂きますってえと・・

ねー(ない)きゃー(きゃあ)ねー(ない)よーに(ように)で、何のことはない、早えぇ話が、無ければないように、と言うのを故郷の言葉で言ったまでのことでして。何だそんな事か、ったく!とお叱りを受けそうでいやはや面目ない、申し訳ございません。


 え~昔は・・と言いましても昭和の初め頃、「40の恥かきっ子」ってえ言葉がありましてね。娘に「知っているかいっ」 と聞いてみますてえと、あまりものを知らない人ですから、案の定、「知らない」と即答でありました。ならば世間様にはどの程度知られているのやらと思いましてね、ちょいとスマホにお尋ねしてみますてえと、あ~有り難や有り難や、♪スマホは何でも知っている~ 夕べあの娘が泣いたのも~ てんで、親切に教えてくれるじゃぁありませんか。


 スマホ先生によりますと、今でも言われている言葉だそうで、死語にはなっておりませんでした。思い起こせば75年ほど前、私は母が丁度40才の時に生まれましたから、私はそのれっきとした恥かきっ子でありました。


 もちろん家族みんなから喜ばれて生まれましたが、6人兄姉の中で一番上とは19才も年の差がありましたから、母は何となく言い辛いことだったようでして。ええ、スマホの説明にもありましたよ。何だかちょっぴり恥ずかしいなぁ、とか、おおっぴらに言いにくいんだよなぁ、なんてえコメントが結構あるんですってねえ、はい。


 でもねアアタ、これって何かおかしな話だとお思いになりません? もしも欲しくてもなかなか生まれない、辛い不妊治療で頑張ってやっと授かった子に、そんなへんてこりんな呼び名が付けられたんじゃぁ、冗談じゃねえや、べらぼうめ、ってんで文句の一つも言ってやりたくなるってことでしょうよ?ねぇえ。 


 因みにね、私の8つ違いのすぐ上の姉は、8年目にして母親になれたんですけどね、これがアアタ、長くて辛い不妊治療の結果の嬉しい出産でありましてね。 しかし、もう少し治療が長引いていたらば、これもまた40の何とやらになっちゃいましたよ、ホント。


 今は高齢出産や40過ぎてからの出産なんてザラですもんね。昔と違って有り難いことに、高齢でのお産のリスクの心配もなく、何時でも何処でも何度でも??ありゃりゃ、これはちと違った、元い、恥かきっ子なんてそんな言葉に用はなしでっせ。


 ちょいと話が40才に拘っちまいましたが、私の長兄の所は40才を過ぎても子供には恵まれませんでしてね。兄弟姉妹の子供達をすごくかわいがる兄夫婦をみて、一人くらい生まれてくれないものかと皆で願いましたよ。母は特にそう思って占いやら祈祷やらと、密かに妊活応援に励みました。


 しかしお嫁さんのすまなそうな様子を見るにつけ、母はいつも「こればっかりはどうしょうもねえよ。おらんきゃぁおらんようで暮らせばいいっちゃ」 「持たん子には苦労はかけらりゃせんから・・」と励ましておりました。本心をぐっと堪えての言葉なんですねえ。


 この母の「ねーきゃーねーよーに」の言葉を身に染みて感じている私ローバでありますが、馬さん、あ、これアチキの夫でありんすが・・オイオイ、いつから花魁言葉に転じたんじゃ? ゴメン元に戻そう。この馬さんと結婚するにあたって母が随分と心配しやしてね、我がまま娘が長男の家に嫁に行ったって勤まる訳がない。その上工場経営なんかしてたんじゃ、景気のいい時ばかりじゃないだろう、立ちいかなくなった時に耐えられるのか、なあんて心配ばかりされました。そんな母の思いにですよ、このあほんだらなアチキったら何て言ったと思いますぅ~ へへへ 「心配ご無用、どんなことがあったって、彼の会社は大丈夫。お天道様と米の飯はついて回りますから~」なんちゃって、言ったのかって?いえいえ、流石のおたんこなすのアチキでも、そこまでは、ね~。 本当はこの台詞、ちょいと言ってみたかったんですよ。これね、志ん朝師匠の噺に出てくる、道楽者の若旦那の台詞なんでして。


 彼の会社は物作りに絶対必要な製品作ってますし、零細企業ながら高い技術力に自信がありましたから、馬さんの会社は巨人軍と共に永遠に不滅です!なんて啖呵きっちゃいました。けどね、お天道様はついて回ってくれたものの、海外に行った親会社には、トホホ、ついて行けませんで・・


 ああ、親の小言と冷酒はなんとやらで、痛い目にあってしまいました。謝りたくってももう母はいないですし、どうしようも有馬温泉ですわ。でもね、母はこうも言ってくれたんですよ。もしどうしようもなくなったら、その時はその時。一生懸命頑張って、ねーきゃーねーよーに暮らせばいい、ってね。ここ、ここですよアアタ。もしかして、ここ重要なんじゃ有馬温泉? 試験にでる鴨南蛮。な~んちゃってね。


 ま、早い話が、どこがって? ご尤もで! つらつら考えてみますとね、母のこの言葉って何だか妙に納得できるところもあるようなないような・・どっちなんだい!

あのビートルズの「レット イット ビー」だって、シャンソンの「ケ・セ・ラ・セラ」だって、大きな意味でこの母のお呪いもどきの言葉と一括りじゃござんせんかいな? な~んて勝手な解釈を拝借。おおっと、無理して韻を踏んで地雷を踏んじゃあいけませんやな。偉大なビートルズと?何言ってんだわれっ、て? ああ許して♪アモ~レ・たも~れ・みよ~ ♪

 

 てな訳で「ローバの充日」お後がよろし・・い・・くないか・・

どうやら引っ込め引っ込めの嵐のようで。ああっ、座布団が飛んでとんでもないことに! コラッ駄洒落なんか言ってねえで早く下座を・♪♪♪ それっ幕だっ。。

 

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