第17話   心地よく温か~い言葉

 「あんずます」という言葉を医師脳先生から教えて頂いた。北海道に住んでいたことのある義父が、よく「あずましい」とか「あずましくない」とか言うのを聞いていて、何となく意味は分かったつもりでいたが、先生の教えて下さった「あんずます」も「あずましい」も、同じく心地良いとか気持ちが良い、ゆったりしたという意味の津軽弁なのだそうだ。私は気に入ってしまって当分の間頭から離れそうにない。


 温泉に浸かって、ゆったりとした気分になると、あ~心地いいなぁ・・と思うあの状況、心持ちなのだそう。私が今カクヨムで毎日が楽しく過ごせているのも、「あんずます」なのだと思う。正しい使い方が分からず歯がゆい気もするが、これからは湯船の中で私はきっと「あ~極楽極楽」に加えて「あんずます~・あんずます~」と言うことになりそうだ。


 そんな「あんずます」のカクヨムで、私は自分に科した10日の自粛期間を過ごすことになった。不愉快な思いをさせてしまったお相手の方から科せられたものではなかったが、十分に痛いお仕置きであった。


 長い間、子供のことしか考えられず、家の中にいるだけで十分幸せと、満足して過ごしてきた私が、全く知らない人だらけの中に飛び込んで知った世界が、カクヨムだったと言える。そこは正に私にとっては異世界で、ファンタスティックでワクワクする夢のような世界だった。


 引き籠りに近い高齢者が仮想空間で、私のアバターにより沢山の友達と出会い、お互いの物語を紹介したりお喋りしているような錯覚に陥ってしまった。皆が優しく接してくれるので、すっかり「あんずます」空間で一日を過ごす、嬉しがり屋のお婆さんに変身してしまった。


 娘が2日ほど前にコンサートに行って来た。何度かの抽選に漏れて入場できなかったのだけれど、会場前でグッズを買ったりファン同士で触れ合ったりで、楽しい時間が過ごせたと熱く語ってくれた。入場できなかった人同士が、「推し」のパネル写真の前で、お互いにシャッターを押しあったり、好きな曲を言いあったり、着ている「推し」デザインのTシャツを見せ合ったり・・ そんな共通する一つのことがきっかけで、見ず知らずの人同士が幸せになれたのだと言う。


 「お母さんにはカクヨムで、そういうものが欲しかったんでしょ」と言わて本当にそうだったと、忘れかけていた自責の涙が又ムクムク湧いてきた。何十年もの昔を思い起してみれば、何人もの友達が折角誘ってくれたにもかかわらず、出不精が故で付き合いが疎かになり、心地良い婚家の家族だけの世界で、満足して過ごして来た長い年月の私だった。


 僅かばかり残った友人と時々お喋りする位しかなかった頃、夫の気の合う友人達が洒落で落語研究会を作った。その会は師匠と煽てられ気を良くした夫も、これまたそのお女将さんと持ち上げてもらっていい気になった私には、私の小説もどき「噺家ごっこ」に書いたように、それはもう楽しく「あんずます」の世界であった。


 家族だけで満足していた本当に小さな世界も「あんずます」だったし、「噺家ごっこ」の世界も「あんずます」だったけれど、異世界カクヨムはもっともっと「あんずます」になってしまった。


 娘はコンサート会場から帰った翌日から、買ったTシャツやグッズでより働き者となりそうだ。幸せのグッズにより気分上々で頑張る娘と同じように、謹慎が解けたその日から、私も皆さんや自分の作品が幸せのグッズとなって、また楽しく暮らせるようになることでしょう。


 でもまだひとつだけ、心に引っかかるものがある。私にとってあずましいカクヨムであっても、不快な気分にさせられたお相手の方には、あずましくない出来事だったのだから、本当の意味で「あんずます」と言えるのは、お相手の方にしっかりお詫びの言葉を伝えて許してもらえた時だと思う。


 しつこいお婆さんはこれだけの文面で、何度「あんずます」という単語を使っただろうか。こんな使い方で良いのかどうか分からないけれど、この言葉の持つ安らぎ、穏やかさ、優しさ・・をもっともっと沢山の人に知って貰いたいと思う。


 何故それほどまでにと言われれば、人としてとても大切なもの、津軽の人達を初め東北の人達が誇りとしているその「あんずます」は、日本人が忘れかけた大切にしたい、心地良く温かい心そのものなのだと私も思うから。


 医師脳先生が「老いの繰り言」第37話で、詳しく紹介されている。私の下手な説明では伝えられないので、皆さんも先生の文面からその良さを感じて頂きたい・・と押しつけがましいローバだが、しつこく是非に是非にと勝手にCM係のようになって言いながら、「ローバの充日」を締めたいな、と思います。

 本日もお付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。

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