第110話 宙ぶらりん

 再び町を歩く。


 ちなみに町は外壁によって囲まれている。


 城郭都市ってやつだ。


 城壁には特殊な魔術が施されていて、魔法攻撃と物理攻撃を減衰する効果があるらしい。


 ていうか思ったけど、こっちの国は俺たちの国よりも魔法の技術が進んでいる。


 やっぱりあれかな?


 うちの国ってほぼ鎖国状態なのが原因かな?


 俺たちはロイスの紹介する定食屋に入った。


 庶民的な味がして美味しかった。


 学園だと高い料理ばっかだもんな。


 ミーアもシャーロットも美味しそうに食べていた。


 シャーロットは貴族だけど、意外とこういう料理食べてそう。


 腹ごしらえをしたあとに、シャーロットがロイスに尋ねた。


「キリアさんはどこにいるのでしょうか?」


 俺たちはまだキリアと会っていない。


「彼女なら無事孤児院に届けたよ」


「ありがとうございます」


「その孤児院、今から行くことできますか?」


「できるよ。案内しようか?」


「え、いいの?」


「もちろん」


 マジで至れり尽くせりだな。


 ロイスさん神っす。


 あざっす。


 それから再び町を歩く。


 すると、街頭演説みたいのをしている人が目に入った。


 なんか白い服を着た人が熱心に語っている。


 どっかの宗教なのかな?


 もしくは政治家?


 いやでも、ここ民主政じゃないから政治家なんていないよな。


「あれはなんですか?」


「星導教会だね」


「星導教会?」


「最近勢力を伸ばしてる宗教だよ」


 へー、なるほど。


 日本人の感覚だと、宗教団体ってちょっと怪しい感じがしてしまう。


 まあでも世界から見たら、日本人の感覚のほうが異常なんだけど。


 宗教って別に良い悪いってわけじゃないし。


 もっといえば良い宗教もあれば、悪い宗教もあるってだけ。


 それは人間にも言えることだ。


 俺たちはロイスについていき、孤児院についた。


 孤児院は古びた施設だった。


 ロイスいわく、ここは星導教会の寄付によって成り立っているらしい。


 ちなみに星導教会はかなりマイナーな宗教らしい。


 国内の最もメジャーなのは中央教会なんだとか。


「じゃあ僕はここで帰るけど、帰り道はわかる?」


「はい」


 俺たちはロイスと別れ、孤児院に入った。


◇ ◇ ◇


 孤児院の中も古く、ところどころ壁が剥がれていた。


 そして院長らしき女性が出迎えてくれた。


 柔和の雰囲気の40代くらいの女性だ。


 白い服を着ている。


 しかし、ツギハギだらけで、貧しさがうかがえる。


 女性は白い手袋をつけていた。


 肩まであるロンググローブだ。


 名前はユルゲン・スイースと言うらしい。


 丁寧に自己紹介してくれた。


 犬人族ドッグマンである。


 ちなみに犬人族ドッグマンはコボルトとは違う。


 見た目がより人間っぽいのが犬人族ドッグマンって感じだ。


 ぶっちゃけ俺もあんまり詳しい違いは知らない。


「この度はキリアがお世話になりました」


 院長が深く頭を下げてきた。


 話し方も丁寧で見た目通り、いい人だった。


 孤児院は年々寄付金が減るばかりで、貧しくなる一方。


 それでも苦労してやっているんだとか。


 院長と軽く話したあと、キリアと会わせてもらうことになった。


「では、星のお導きがあらんことを」


 院長はそういって、仕事部屋に戻っていった。


 俺たちは子どもたちの部屋に入る。


「あっ!」


 真っ先にキリアが駆け寄ってきた。


 キリアは元気そうなようだ。


 良かった。


 かなりのトラウマ体験だったろうに。


「キリア、久しぶり」


 俺は両手を広げて、キリアを出迎える。


 そして、俺のところに来たと思いきや……


「シャーロットさまー!」


 キリアがシャーロットに抱きついた。


 え?


 マジか……。


 俺の両腕は宙ぶらりんなんだけど……。

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