第111話 変顔

「ぷっ……アランくん」


 ミーアに笑われたし。


 くそー、俺よりもシャーロットの胸が良いってのか?


 シャーロットが、あらあら、と言ってキリアの頭を撫でる。


「シャーロットさま。あいたかったです」


「私もよ、キリアちゃん」


 どうやらキリアはシャーロットに懐いてるようだ


 俺にも懐いてくれていいのに……。


 しょぼん。


「ちっちゃいお姉ちゃんもいる」


 キリアがミーアを指差す。


「ち、ちっちゃくなんかありません! 成長したら大きくなります!」


 ミーアが胸を隠しながら言う。


 ミーアさん?


 なんのこと言ってるのかな?


「それと……」


 キリアが俺のほうを見て、言いよどむ。


 なんか怖がられてる気がするけど、気のせいだよね?


「真っ赤なおにいちゃんだ」


 真っ赤なお兄ちゃんってなんだよ。


 もしかして俺が血まみれだったせい?


 俺はキリアを見ると、キリアがぎゅっとシャーロットの袖を掴んだ。


「アラン様? あまり怖がらせないでね」


「いや、怖がらせてませんよ」


「アランくん、もっと笑顔です」


 あ、そうか。


 その手があったな。


「キリア。君には特別に凄いものをみせてあげよう」


「……すごいもの? おほしさまより?」


 なんでお星さま?


 まあいいや。


「じゃあ、俺の顔を見ててね」


「……うん、わかった」


 キリアが俺の顔をじーっと見てくる。


 どうやら彼女の中では、俺への恐怖よりも好奇心が勝ったようだ。


「ふんむ!」


 俺は全力で顔に力を入れた。


 身体強化を使い、限界以上に表情筋を動かす。


 アラン特別スペシャル変顔を披露した。


 どうだ?


 面白いだろ?


「ぷっ……おにちゃん……あははははっ、なにその顔!」


 キリアが笑ってくれた。


 なかなかいい反応だ。


 変顔したかいがあるというものだ。


「他にもあるぞ? 見るか?」


「うん! 見たい!」


「じゃあ、これでどうだ?」


 俺は他の変顔をやってみせた。


 ミーアにも見せた変顔だ。


「あははははっ! ぶさいく~! おにいちゃんへんなのー!」


 やった!


 こんなだけ笑ってくれたら、変顔冥利につきる。


 いや、マジで変顔練習したかいがあったわ。


 俺の今までの努力の中で、一番意味のある努力だった気がする。


 いままで遠巻きに俺たちを見てた子も俺の周りに集まりだした。


 いろんな種族の子たちがいる。


 でも、みんな白い服を着てるのは統一されていた。


「おにちゃん、ボクにもみせてー」


「わたしにもー」


 子どもたちに囲まれて、顔をもみくちゃにされる。


 うむ、くるしゅうない。


「そんなに顔引っ張ったら、変な顔になるだろ?」


「もともとへんなかおだもーん」


 生意気そうな少年が言ってきた。


 おう?


 それは喧嘩売ってるのか?


「もっと凄い変顔してやるから、みんな一旦離れような?」


「「はーい」」


 みんな聞き分けがよくて助ける。


 少年少女たちが黙って俺の顔を見てくる。


 ごほん、と咳払いしてから、俺は顔に魔力を集中させる。


 そして変顔アランスペシャルを披露した。


「わはははー!」


「わー、すごーい!」


「ヘンなかおー!」


 みんなちゃんと笑ってくれている。


 ミーアも子どもたちと一緒になって笑ってる。


 てか、ミーアが違和感なく溶け込めるのが凄い。


「わたしもへんがおやりたいー!」


 キリアが言ってきた。


 すると、ボクもー、わたしもー、と他の子達も手を挙げる。


「わかった。わかった。じゃあみんなには特別に、アラン式スペシャル変顔を伝授してやろう」


 わー、と歓声が上がる。


 まさかここまで変顔が受け入れられるとは思わなかった。


 変顔の練習して、マジで良かった。


「みんな! お兄ちゃんにあんまり迷惑かけんじゃないですよ!」


 一人、ちょっとしっかり者に見える子が、他の子たちに言い聞かせた。


 この子はあれだ。


 学級委員みたいな感じがある。


 他の子達が「はーい」と返事をする。


 それから俺はみんなに変顔を伝授した。


 ミーアは他の子達に”お友達”認定されていた。


 もしかしてミーア、同じレベルだと思われてる?


 おっかしいなぁ。


 ミーアって俺よりも年上なんだけどな。


 子どもたちに混ざってるのを見ると、みんなのよりもちょっと年上の子にしか見えない。


 俺やシャーロットよりも、ミーアのほうが子供と親しくなれている。


 いつの間にか、ミーアの周りに子どもたちが集まっていた。


 途中から、俺のところには誰もいなくなった。


 ちなみにシャーロットはさっきのみんなを注意した子となにやら話をしていた。


 俺だけボッチ?


 ……ちょっと寂しい。


 変顔伝授したのになー。

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