第95話 チート最高だぜ

 わっはっは。


 洞窟の爆破してやったぜ。


 崩落半端ないわ。


 シャーロットの結界魔法がなければ、生き埋めにされていたかもな。


 まあなんにせよ、シャバの空気を吸えたぜよ。


 外に出ると、ミーアとテトラがいた。


 ガタイの良い男もいる。


 うわー、夢で見た光景と似てる。


 萎えるわ。


「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」


 は?


 こいつ何言っちゃってんの?


「何か勘違いされていません? ミーアとテトラのために来たんですよ」


 誰が、こんな筋肉ダルマのところに行くかよ。


「それほどこの女が大事か?」


 男がミーアを見下しながら言う。


「当たり前だろ」


「はっ。それなら俺のことしか考えれないようにしてやろう」


「いや、そういうのはいいです」


 ヤダこの展開……。


 まさか、こいつBL?


 筋肉マッチョとかBL映えしそうだけど、マジで勘弁。


 ってわけで、筋肉ダルマをいっちょ燃やしちゃいますか!


 男の頭上に魔法陣を展開させる。


「遅い」


 男がミーアの胸に向かって、腕を突き刺そうとした。


「アランくん!?」


 ミーアが叫ぶ。


 だが――


「なに……!?」


 男の顔が驚愕に染まった。


 男の拳はミーアには届かず、空中で止まった。


 その直後。


「がはっ、あああぁあぁ!?」


 男の頭が炎に包まれた。


 湿気が心配だったけど、問題なく燃えてくれた。


 だが、それも一瞬のこと。


 男が魔力を使って、炎を振り払う。


「……なるほど」


 男が洞窟の入り口を睨んんだ。


 そこにはシャーロットが立っている。


「結界魔法か……」


 バレちゃあ仕方ない。


 シャーロットが作り出した結界によって、ミーアは守られていた。


「ふんっ、小賢しいな」


「うるせーやい、クソ筋肉ダルマ。俺たちのバカンス邪魔した罪、償ってもらいますよ?」


 このクソ筋肉ダルマには、怒りが溜まってんだよ。


 ・・であっても、ミーアを殺したことへの怒りは消えない。


 俺は2つの魔法陣を同時に展開させた。


――二重魔法ダブル・マジック


 2つの魔法を同時に扱う技だ。


 同時に2つの魔法陣を構成するのは、処理がかなり複雑になる。


 だが、火球は使い慣れており、魔法陣を生成するのにあまり労力コストがかからない。


「ほう、二重魔法ダブル・マジックか」


 男が感心したような鼻息を漏らす。


「随分と余裕そうですね」


 男を狙い、火球を放つ。


 接近戦では俺のほうが不利だ。


 さすがに身体強化に全振りしたような相手には、敵わない。


 だが、中・長距離なら負ける気がしない。


 男に休む暇を与えず、連続で魔法を放っていく。


 これが二重魔法ダブル・マジックの長所だ。


 魔法使いには、大きな欠点がある。


 魔法を一度放ったあと、次の魔法を放つまでに時間が開いてしまうことだ。


 それを補う方法はいくつかあるが、その一つが二重魔法ダブル・マジックだ。


 もちろん、デメリットもある。


 魔法領域への負担が増し、魔力の威力および精度が落ちることだ。


 ただし、俺の場合、魔法陣の生成に大きな負荷がかからないため、二重魔法ダブル・マジックはそう難しい技術ではない。


 男が逃げ回る。


 俺はほぼ魔力を大量を使いながら、男を追い詰めていく。


 やっぱり戦いはこうでなくっちゃね。


 圧倒的に自分たちが有利な状況で戦うのが一番楽しい。


 チート最強!


「これほどの魔法を連発できるとはなッ……」


 男の興奮した声が聞こえてくる。


 こいつMなの?


 ならもっと燃やしてやるよ。


「――――」


 俺はひときわ大きい火球を放った。


「……クッ」


 男の肩に火球が被弾する。


 続けて、発火イグニッションを放つ。


「あぐっ……!?」


 男の全身が轟々と燃え盛る。


 魔力量が多いって、マジでチートだな。


 延々と魔法を撃っていられる気がする。


「……ッ」


 男は倒れない。


 火球と発火を当てたのに……こいつ、どんだけ耐久性高いんだよ。


 今までの敵だったら、火球一発でノックアウトできたぞ。


 だが、このままなら押しきれそうだ。


 俺は再び、火球を放とうとする。


 だが――


「――――」


 突如、男の魔力が膨れ上がった。


 男にまとわりついていた炎が雲散する。


「あの女に感謝だな。この力、まるで桁が違う」


 男がニッと口の端を吊り上げた。


「へ、それ良かったですね。……でもあんたは俺より弱い」


「ほざけ」


 俺は周囲を確認する。


 周りは何もない。


 ミーア達とも距離をとれてるし。


 ここなら何やってもいいよな。


「最近開発した魔法があるんですけど、特別に見せてあげますよ。感謝してくださいね」


「ほお、それは楽しみだな」


 男は挑戦的な笑みを浮かべてきた。


 マジで余裕そうだな。


 まあ俺には好都合だけど。


「――――」


 魔力領域にアクセスする。


 記憶領域から魔法陣を引っ張り出す。


 男の頭上に魔法陣を展開させる。


 そして、魔法陣にありったけの魔力を込めた。


 巨大な岩石が発生する。


 岩石が重力に従って落ちていく。


 魔法陣には、速度の術式も加えている。


 そのため、落下速度は単純落下よりも速い。


 突如、岩石が燃えた。


――隕石メテオ


 男が空を見上げる。


 男の視界を巨大な隕石が埋め尽くす。


「まさか……これほどとは」


 男が呟く。


 直後、隕石が砂浜に落下した。


――どゴォォォぉぉん


 轟音が響き渡った。

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