第76話 バカンスじゃああ!

 バカンスじゃあァァ!


 俺はシャーロットの家に来ていた。


 ちなみにシャーロットの本名はシャーロット・ヒュターである。


 ヒュター家は結界魔法を得意としており、シャーロットの住む屋敷の周りには強力な結界が貼られていた。


 また、屋敷は侯爵家ということだけあってかなり広かった。


 フォード家の三倍はあるんじゃないか、と思う。


 使用人もたくさんいたし。


 てか、フォード家が質素過ぎるんだよなー。


 伯爵なのに、ほとんど使用人いないし。


 まあ金はたくさんあるんだろうけど。


 その金も膨大な研究に費やしてる。


 無駄なもんを買うよりは研究だろ、というのが父の考えが透けて見える。


 と、それはさておき。


 俺はテトラ一緒にシャーロットの家に来た。


 ちなみにイアンは俺たちよりも先に家を出て、2日前にシャーロットの屋敷に到着していた。


 会長と話す用事があるから先に行く、と言ってたけど、もしかして用事って生徒会のこと?


 長期休暇でも生徒会について考えるなんて、二人とも偉いよな。


 まあ見習いたくはないけど。


 休みの日に仕事のことなんて考えたくもねぇ。


「よく来てくれたわね。歓迎するわ」


 シャーロットが屋敷の前で出迎えてくれた。


「お世話になります」


 俺はペコリと頭を下げる。


 テトラも、よろしくお願いします、と言って頭を下げた。


「つまらないものですが、どうぞ」


 俺はシャーロットにライターみたいなものを渡す。


「このアイテムは……」


 ぼそっとシャーロットが呟く。


「え? 知ってるんですか?」


「いいえなんでもないわ。これはどういうものなの?」


 俺は、ごほん、と咳払いをする。


「なんでもボックス~」


 22世紀から来た某猫型ロボットの声真似をしてみる。


「?」


「じゃ……冗談です」


 ちょっと白けた。


 ツッコミ役がいないボケほどつまらないものはない。


 そもそも面白いボケですらなかった。


 自重しよう。


「いろいろなものを出すことができる魔法道具マジック・アイテムです」


「いろいろなもの?」


「火や水、光などです」


 サバイバルで使えそうな魔法道具マジック・アイテムだ。


 まあ、サバイバルすることなんてないだろうけど。


 なぜかわからんが、これを持っていったほうが良いと思った。


 直感ってやつだ。


「へぇ、便利ね」


「はい。あとそのアイテム、魔石からも人の魔力からも魔力供給が可能です」


「すごいわね。さすが魔法の名門フォード家。面白い魔法道具マジック・アイテムを作ってるのね」


 ん?


 なんかシャーロットの言い方に違和感を覚えた。


 まあいいか。


 それからシャーロットに屋敷を案内してもらった。


 さすが侯爵家というべきか、内装も豪華だった。


 同じ貴族であるのに、うちとは全く違う。


 屋敷を堪能したあとに、客室のソファでくつろがせてもらった。


「ところで、プライベートビーチはどこにあるんですか?」


「侯爵領の一番南の半島にあるわ」


「そこまで遠くないです?」


「大丈夫よ。ひとっ飛びでいける魔法道具マジックアイテムがあるから」


「それは……すごいですね」


 シャーロットが胸を張った。


 大きな胸だ。


 こっちもすごいな。


「もうすぐに出発するんですか?」


「そう頻繁に動かせるものじゃないから、みんなが集まってからにする予定よ」


 それから数時間で、ジャン、ミーア、クラリス、オリヴィアの順で到着し、全員が揃った。


 ジャンのやつ、アロハシャツなんか着やがって、めちゃめちゃ乗り気じゃねーか。


 てか、アロハシャツなんてこの世界にあるんだな。


 俺も一着欲しい。


 あとミーアがなぜか学生服を着ていた。


 ついでにローブも着ている。


 その格好暑くない?


 ミーアいわく「他の服がないので」とのことだ。


 なんか、ごめん。


 でもローブまで着てくる必要はないと思う。


 なにはともあれ、今からプライベートビーチだ!


 ワクワクしてきたぜ!

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