第4章 バカンス編

第75話 メテオ

 いえーい!


 長期休暇がやってきたぜ!


 俺は実家に帰ってきた。


 懐かしいというより「あ、こういう感じね」というイメージだ。


 映画で観た場所を実際に訪れている印象を受ける。


 ……いや、それはちょっと違うかな。


 まあ、なんでもいいや。


 とりあえず実家に帰ってきた。


 フォード家のあるローランド伯爵領は国の南西部に位置している。


 西には広大な森が広がっており、南には海がある。


 自然豊かな場所だ。


 ちなみに森の奥深くには魔族が住んでいる。


 さらに、森の向こうには、様々な種族が暮らす土地があるらしい。


 冒険心がくすぐられる。


 一度は行ってみたい。


 と、それはさておき。


 俺は父に挨拶に行ったのだが、無視された。


 その代わり、テトラが父に呼び出されていた。


 この格差はなんだ?


 こうみえても俺、対抗戦で活躍したんだけどなー。


 はあ……まあいいや。


 バカンスは2週間後にある。


 集合場所はシャーロットの家だ。


 それまで魔術の研究でもしてこ。


 新しい魔術の開発もしたいし、俺はしばらく引きこもることにしよう。


 対抗戦のときに感じたが、発火イグニッション火球ファイア・ボールだけだと物足りん。


 やっぱり、新しい魔法を覚えたい。


隕石メテオとか良いよな」


 隕石メテオは土と火の複合魔法だ。


 ちなみに隕石メテオは特級魔法だ。


 特級魔法の難易度は激ムズであり、あのオリヴィアでさえ、上級魔法までしか使えない。


 ただし、級が上がれば上がるほど記憶容量メモリを使うため、なんでもかんでも覚えればいいというわけじゃない。


 オリヴィアのような接近戦をメインとする魔法使いなら、なおさら特級魔法を覚える意味はないだろう。


 特級ともなれば、詠唱が長くなり、戦闘では使いにくいらしいし。


 ちなみに三年生には一人だけ、特級魔法を使える魔法使いがいる。


 シャーロットだ。


 噂では、シャーロットは神級も使えるんだとか。


 それがホントだったら、マジでバケモンだ。


 特級でも十分ヤバイと言われているのに……。


 まあさすがに、噂だろうけどね。


 と、それはさておき。


 今から俺は難易度激ムズと言われる特級魔法を習得しようと思う。


 ただし普通の隕石メテオを習得する気はない。


 てか、ムリだ。


 隕石メテオの魔術式とかかなり複雑になるだろうし、そもそも特級魔法を入れるだけの記憶容量メモリがあるかも怪しい。


 そこで俺はこう考えた。


「岩作って火纏わせれば、メテオになるんじゃね?」


 我ながら天才的な発想だと思う。


 アラン式メテオの作成手順はこうだ。


 まずは岩を生成する。


 次に岩に火をまとう。


 最後に火がまとった岩を重力に任せて落とす。


 以上、出来上がり!


 要は岩の生成魔法ロック火の生成魔法イグニッションを組み合わせるってことだ。


 めちゃくちゃ簡単に見えるが、これは俺だからできることだ。


 そもそも普通の魔法使いなら、発火イグニッションを使ったところで小さな火しか出せない。


 岩の生成魔法ロックにしても同様で、石塊 ロックを使っても小さな岩しか作り出せない。


 つまり、詠唱魔法で発火イグニッション石塊 ロックを組み合わせても、メテオにはならないということだ。


 だが、俺なら問題ない。


 俺は魔力量が多く、無詠唱魔法を使えるからだ。


 チート最高!


 さらにありがたいことに、石塊 ロック発火イグニッションは原理が似ている。


 というのも、これら2つの魔法は、岩を生成するか、火を生成するかの違いしかない。


 発火イグニッションの魔法陣を少し修正すれば石塊 ロックの魔法陣となる。


 だがここからが問題だった。


 石塊 ロック発火イグニッションをつなぎ合わせるのが難しい。


 まず、術式の接続順を考える必要がある。


 岩に火を纏わせるんだから、当然、石塊の術式ロックを先にし、発火の術式イグニッションを後にしなければいけない。


 次に、雑音を考慮しながら、術式を構成する必要がある。


 2つの術式を組み合わせると、雑音が入りやすくなるため、うまく術式を構成していけなければならない。


 最後に、記憶領域と結びつける術式と、メテオの術式をうまく繋ぎあわせる必要がある。


 ここでもまた術式の順番や雑音などを考慮しなければならない


「ライセンス持っている魔術師なら、すぐにでもできることなんだろうな」


 それこそ、一級ライセンスを持ってるエミリー先生なら数時間で魔術を完成させそうだ。


 まあ、あの人はもう犯罪者なんだけどね。


 エミリー先生にはもっと教えてもらいたかった。


 閑話休題。


 そんな感じで魔術の研究をしていたら、いつの間にか10日も過ぎていた。


 その間、家族とはほとんど会話をしていない。


 ガチの引きこもり状態だった。


 でもそのおかげでメテオ隕石を完成させることができた。


 魔法領域にもちゃんと入ったし、これで俺はメテオ隕石を使えるようになった。


 さて、人がいない場所でメテオ隕石を使ってみますか。


 ただっぴろい平地で、メテオ隕石を発動させてみた。


 すると……


―――ドゴォォォォォン


 地響きが鳴った。


 かなりのサイズの隕石が振ってきた。


 これは洒落にならん威力だ。


 大きなクレーターがぽこぽこと出来上がった。


 町中でメテオ使ったら、とんでもないことになりそうだ。


 これ、初級魔法を組み合わせただけなんだよな……。


 控えめに言ってやばいと思う。

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