第57話 フラグじゃないからな?

 ミーアの試合を観た後、急いで第一会場に行った。


 ミーアの試合が早く終わったおかげで、オリヴィアの試合にギリギリ間に合った。


 第一会場はほぼ満席状態となっていた。


 たぶんみんな、オリヴィアを観に来たんだろう。


 あの巨乳は見たくなるよな。


 いや、さすがに胸が目的ではないか。


 試合はオリヴィアの圧勝だった。


 オリヴィアの得意とするのは干渉魔法だ。


 彼女の干渉魔法は独特で、魔波――魔力が含んだ波――を用いる。


 詠唱魔法によって干渉魔力を生み出し、”音”によって魔力を拡散させ、相手の魔力に干渉するのだ。


 さっきの試合では、オリヴィアが「とまれ」言って、相手の動きが止めていた。


 そして動けない相手に対して、オリヴィアがクリティカルヒットを4回出して勝利していた。


 まさに圧巻。


 干渉魔法はチートすぎる。


 俺も干渉魔法を食らったことがあるが、脳が揺さぶられるような不快感を覚えた。


 一応、対応策もある。


 干渉魔法を受けた瞬間に、魔力操作に集中し、魔力をかき乱されないようにすることだ。


 しかし、それがわかっていたところで、対応できるとは限らない。


 やっぱオリヴィアはつえーっすわ。 


 続く二試合も観戦してみたが、どちらもレベルが高いとは言えなかった。


 いまのところ、ミーアとオリヴィアの2人が抜きん出ている。


 優勝争いもこの二人になりそうだ。


 ブロックも反対側だから、決勝まで当たることはないだろうし。


 最後の試合を観終わった俺は、テトラと一緒に第一会場を出る。


 ぶらぶらと歩いていると、エミリー先生と遭遇した。


「やっほー! アランくんじゃん!」


 パタパタとエミリー先生が近寄ってきた。


 この人、相変わらずテンション高いな。


 スタジアムDJとかできるんじゃね?


「あ、どうも」


 俺は軽く頭を下げる。


 テトラがスッと俺の後ろに隠れた。


「あれ? テトラちゃんも一緒なんだー。珍しい!」


「……」


 振り向くと、テトラが無言でエミリー先生を見ていた。


 ……んん?


 テトラってこんなに人見知りするタイプだっけ? 


「やっほー、テトラちゃん!」


 テンション高いな、この人。


「……」


 テトラが無言を貫いている。


 この2人、絶対に気が合わないだろ。


「ありゃりゃぁ……私、嫌われちゃってるよ」


 先生がガックリと肩を落とす。


 嫌われてるというより、相性が悪いだけだと思うよ?


「……すみません。私はここで失礼します」


 テトラが去っていった。


 エミリー先生のハイテンションには、テトラもついていけなかったらしい。


「すみません。うちの妹、人と関わるのが苦手なので」


「良いよー。気にしてないって。生徒から嫌われるのも慣れてるし」


 サラッと重いこというな、この人。


 でも、やっぱり教師は嫌われる職業なんだ。


 そういえば教師になった友達がいたけど、生徒にガン無視されてるとか言って、死にそうな顔してたな。


 あいつ「JKと同じ空気吸えるなんて教師最高だな」とか言ってたもんな。


 そりゃあ嫌われるわ。


 なんかあいつに関しては同情する気になれん。


 自業自得だと思う。


「まあ、人から嫌われるのも慣れてるんだけどね」


 いや、もっと重いわ。


 なんだよ、その開き直り。


 どう反応していいかわからんわ。


 とりあえず話題を変えよう。


「え~と、それで……エミリー先生も試合観てたんですか?」


「え? 試合?」


「ん? はい。試合ですけど」


 他に観るものある?


「そんなの観ないよ。一回戦なんて観てもつまんないじゃん」


 毒舌だなー。


 だから嫌われるんじゃない?


 見た目はのほほんとしてるのにな。


 まあこのギャップが好きって人もいるんだろうけど。


「じゃあ僕の試合もつまらないから観ないですよね」


「ううん、そんなことないよ。全力で観るから」


 そこまで真剣に見なくてもいいよ?


 かる~く流し見するくらいでいいから。


「……ありがとうございます。でも、なんで会場にいるんですか? 試合観ないのに」


「魔法障壁の点検をしてたんだよ。魔術がちゃんと作動してるかなーって」


 あ~、なるほど。


 そういうことね。


 スタジアムには頑丈な魔法障壁が貼られている。


 選手の攻撃が観客に当たらないようにするためだ。


「点検って具体的になにやってたんですか?」


「スタジアムの魔法障壁は、巨大な魔石エネルギーによって動いてるんだけどね。もしも暴走したら、スタジアムが吹っ飛んじゃうから。そうならないように確認してたの」


「え……」


 こわっ。


 そんな危険なものが使われてのかよ。


 まさか大会中に爆発とか起きたりしないよね?


 これフラグじゃないからな?


 主人公おれがいるからって、建物爆破させんなよ。


 どっかのコ○ン映画じゃないんだから。

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