第58話 固有結界
エミリー先生が笑って答える。
「そんな驚かなくていいよ。ちゃんと安全も考えられて設計されてるし、術式が誤作動起こしたとしても、強制的に魔力の流れを断ち切る仕組みになってるから」
「ですよねー」
良かったー。
ひとまずスタジアム爆破ってのはなさそうだ。
安心して良いんだよな?
「でも念には念を入れて、確認しておきたくてね。ついでにちょっと調整もしたいし」
「へー、偉いですね」
俺の(昔の)友達もエミリー先生を見習って欲しい。
JK最高とかいう犯罪者予備軍と違って、エミリー先生はちゃんと先生をやっている。
「偉い? なんで?」
「だって生徒のためですよね?」
「違うよ。アランくんのためだよ」
「……え? どういうことですか?」
なんで俺のため?
「だってアランくん。強い魔法使うでしょ? そんなことしたら魔法障壁が壊れちゃうじゃない。アランくんの魔法にも耐えられるように障壁を強化しようってこと」
なるほど……?
そんな簡単に魔法障壁って壊れちゃっていいの?
てか俺、魔法障壁壊すほどの強い魔法使わないからね。
「……そもそも、どうやって強化するんですか?」
「その前に、魔法障壁がどういうものかわかる?」
「結界魔法の一種ですよね」
結界魔法にはいろいろな種類があるが、基本的に攻撃を防ぐ手段だと捕らえて良い。
まあ
ちなみに結界魔法はシャーロットの得意な魔法でもある。
「そうだね。じゃあここで一つ質問」
先生が人差し指を立てる。
タラン、という効果音が聞こえてきそうだ。
「スタジアムの魔法障壁は、どのような形の術式でしょうか?」
「形……? 魔法陣じゃないんですか?」
「魔法陣だけが魔術じゃないよ」
そういえばそうだったな。
魔術は魔法陣以外の形でも表せる。
つまりは……
「スタジアム自体が術式になってるってことですか?」
「当たりー。やっぱりアランくんは賢いねー。ますます好きになったよ」
「先生とそういう関係になるのはちょっと……」
教師と生徒の禁断の関係には興味ある。
でも、もう少しだけ待って欲しい。
せめて学園を卒業してからにしませんか?
「君、たまに馬鹿なこと言うよね」
「馬鹿と天才は紙一重ですよ」
「……どっちかっていうと、馬鹿寄りだと思うよ?」
なぬ!?
上げてから落とすのはなしだろ!
それ一番傷つくやつだからな!
「それで話を戻すけど」
話を戻された。
俺、落とされたままなんだけど。
「スタジアムが術式になってるから、流せる魔力量はかなり多いんだ。魔力量を増やすだけで、魔法障壁を強化できるってわけだよ」
「へー、簡単ですね」
「仕組みはね。ただし、スタジアムを作るのは相当大変だったと思うよ。なにせこの大きさで魔術式を構成するんだから」
「たしかに……」
このでかい建造物を、よく術式にしようと考えたな。
スタジアムを設計したやつはイかれてると思う。
「これだけ大きな術式なら、全体の術式を制御する術式とかありそうですね」
人間でいう脳みたいな役割の術式があってもおかしくはない。
「そうそう。よくわかったね。アラン君は理解が早くて助かるよー」
「やっぱり天才寄りですか?」
「そういう発言が馬鹿っぽいんだよ」
マジか!?
もしかして俺、喋ると馬鹿だと思われてる?
お口にチャックでもしとこっかな。
にしても、魔術ってやっぱり奥が深い。
「話は変わるんですけど、この世界に固有結界ってありますか?」
「あるよ」
え、マジで!?
最高だろ。
「なんで固有結界が気になるの?」
そんなの決まってるじゃないか!
固有結界にはロマンがあるからだよ。
「無限の剣でできていた! ってやりたくないですか?」
「ごめん。ちょっと意味わかんないや」
すごい馬鹿な子を見る目で見られた。
そんな目で見ないでくれよ。
「それで、どんな結界なんですか?」
「固有結界といっても色々あるけど、一般的なものは、結界の中に特殊な空間を作り出すってものだよ」
「へぇ、なるほど」
じゃあ、無限に剣を内包した世界とか作れるのか?
いや、さすがにそれは無理だろうな。
魔法はそこまで万能な力ではないと思う。
「ちなみに先生も固有結界作れるんですか?」
「魔術ならね」
まじか……。
さらっととんでもないこと言ったな、この人。
固有結界の魔術がどれほどムズいかは知らんけど、かなり複雑な術式のはずだ。
そもそも”空間を作り出す”ことが簡単なわけがない。
エミリー先生って、実はとんでもない人なのかな?
「私の顔ジロジロとみて、どうしたの? もしかして惚れちゃった?」
「あ、それはないです」
「……もうアランくんには何も教えてあげない。じゃあね、バイバイ」
先生が踵を返し、去っていった。
え、まさか怒らせちゃった?
いや、先生の顔もキレイだと思うよ!
だから、もう教えないなんて言わないでくれー!
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