六十五歳

川上雄二

第1話

 六十五歳を前にして職場を退職した。パート清掃員として、神経・精神科病院で八年働いた。

 真面目にこつこつと働いて、ある程度の評価、信頼も勝ち取った。このまま七十歳まで働いて、勤めの仕事を辞めようと考えていた。

 ところが、その目標が揺らぐことが起きた。一つは、年末調整書類に関する連絡不徹底がその原因だ。清掃員まで連絡が届かないまま、総務への提出期限の前日を迎えてしまったのだ。

 それを上長の看護師長にただしたが、一言で済まされてしまった。

‘連絡はした。聞き逃したが、たまたま、連絡の場に居なかったのだろう’

 私は、連絡事、必要事項は掲示して欲しいと改善を求めたが、師長からは総務にこの話しは伝わらず、私が直接、総務に話して改善された。

 もう一つは、コロナ渦にある中、忘年会の話しが持ち上がった。当然、師長は諌めると思った。私も不参加の意思を示した。

 ところが師長は、自ら参加の意思を示したのだ。私は、愕然として言葉がなかった。

 忘年会は、部長の諌めにより中止になったが、同じ看護師が、コロナ渦の最前線で懸命な治療に当たっている時に忘年会の話が出る辺りが情けない。それに師長が乗っかるとは…呆れてものが言えない。

 これらの事が、私に退職の意思を固めさせた。

 退職したとき、私の年齢は六十四歳、六十五歳まで四ヶ月に迫っていた。

 新たな職場を求めて就活となった。

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六十五歳 川上雄二 @yuuji-dokusyo7

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