第27話『廃墟のガンマン』
「いつものヤツ」
賄賂と代金を一緒に差し出しながら部長が言った。
「新発売の購買部開発ミックスジュースはいかが?」
「いらねぇ」
「チッ」
露骨に態度を悪くした購買部の生徒がタバコの箱をカウンターの下から取り出す。
部長は手早く箱を受け取り、足早に部室へ向かった。
──部室
「だから!今はゴーストタウンになってる街に大金が隠してあるんだって!」
メガネは今日も仕入れてきた噂話をもとに吠えていた。
「またそういう詐欺に引っかかって…」
PPもまともに取り合わない。
「まぁ暇だから見に行ってもいいけどよぉ…」
足を伸ばしながら部長は言った。
機械化装甲射撃偵察帰宅部は、依頼がない時はただただ暇つぶしをする部活なのだ。
「出発に賛成の人~メガネ以外で~」
部長が言った。
「どうでもいい」
ストレロクが寝転がったまま言った。
「たしかにどうでもいいわ」
PPが言った。
「あっ、出発ですか?」
新入りは銃を手入れしていて話を聞いていなかった。
「あー残念ながら、賛成はありませんでしたー」
部長が気だるげに言う。
「ちょっとー!」
メガネが抗議する。
「行かないとは言ってないけど、賛成は、ありませんでした~」
AKを掴みながら部長は立ち上がった。
「ガス代はメガネもちだからね」
PPも立ち上がってBMPに乗り込む。
ストレロクは無言で起き上がってチェストリグを着用し、マガジンを補充して出発準備をする。
新入りはすでに準備万端だ。
「あ、うん…」
メガネは複雑な面持ちだった。
廃墟の街の近くまでやってきた面々が、念のため偵察していると、街に入っていく車列を見つけた。
「なんでこんなところにトラックで大勢乗り込んでくるんだ?」
双眼鏡を覗きながらストレロクが言った。
「まずいよ早く行かないとお宝が…!」
メガネが狼狽する。
「ガセじゃなかったのか…?」
「どうする?部長」
「待て、なんかまたトラックが来たぞ…?」
トラックが街に入った途端、銃声が聞こえた。
「あ、撃ち合ってる…」
「これは漁夫の利が狙えますわよ」
「メガネ、長岡みたいな喋り方やめろ。腹立つ」
マフィア同士が撃ち合っているところに、BMPが主砲と機関銃をながら突っ込んでいった。
トラックの周囲で戦っていたマフィアたちはすぐに制圧されてしまった。
「ふふふ、あとはお金を探すだけよ…」
メガネが邪悪な笑みを浮かべる。
「他にも居るかもしれん、周辺を警戒しながら行くぞ」
部長が冷静に指示する。
「どこへ行くんだ?金の位置なんて知らないだろ」
ストレロクが言った。
死んでいなかったマフィアの数人を尋問して、目的地を割り出した一行は前進を始めた。
「あのビルみたいだが、先を越されたな」
「奪い取れば良いのよ」
メガネがMP5を握りしめる。
部長の合図で一斉に突入する。
ビル内に居た数人を蹴散らして、地下金庫への階段を降る。
部長が金庫の前に立つマフィアを狙い撃とうとした瞬間、AKが嫌な音を立てた。
「クソっ!」
部長は動作不良を起こしたAKを手放すと素早くリボルバーを抜いて撃った。
相手と同時に部長が倒れ込んだ。
「部長!」
「いてぇ」
手放したAKが部長の膝を強打したのだった。
「クリアーだ」
周囲の安全を確認したストレロクが言った。
早速メガネは金庫に取り付き、爆破準備をしている。
「みんな離れてー」
部員たちが顔をしかめて耳を覆う。
吹き飛んだ金庫の扉から紙幣が崩れ落ちてくる。
「お金だーッ!…あれ…?」
メガネが違和感に気づく。
バラバラと舞っていた紙幣を手に取ったストレロクが言う。
「北日本時代の旧札だ…今じゃ使い物にならねぇぞ…」
「良かったなメガネ、札束風呂ができてよ」
呆然とするメガネの肩に手をおいて部長が言った。
「おー、よく燃えるわ」
部長の投げ捨てたタバコから、紙幣の山に火が移った。
「帰ろっか」
PPが言った。
メガネの目に、燃え盛る紙幣が焼き付いていた。
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