第4話 魔法テスト

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 「では、大榎木おおえのきさん。準備は良いですか?」

「はい。大丈夫です。」

(きっと...今考えた魔法ならいける...!)

 柊香しゅうかが考えたのは、水の圧縮だ。水は通常だと圧縮できないらしいが、なんらかの方法でできるらしい。だから、無理矢理過ぎるが、それを魔力で補って、なんとかして水の刃を作って見ようと思う。

《水刃》

「えいっ!」

 柊香には杖が無かったが、杖無しでも何とかなるものらしい。その瞬間、柊香の手の先から、一枚だけ、水の刃が出てきた。その刃は、マネキンの首を跳ね飛ばし、胴体と完全に離れた。が、これで終わりではない。

《光閃》

「はあぁ!!」

 刹那、柊香の指先から、光が迸り、何も見えなくなった。そして、数秒も掛からずに光が引くと、目の前に消し炭になったマネキンの成れの果てがあった。ちなみに、光で関係の無いものに被害を及ぼさないように、自分を含めて、効果範囲内には、光を吸収するバリアを展開してある。後で分かったが、割と魔力を消耗する大技だったらしい。柊香は教師の方を見て一一驚いた。教師は驚いた様な顔をしていた。そして、震えた声で、

「い、今の魔法をやったのか?無詠唱で?ありえない...それこそ、大魔導師ランクSでないと無理だ...とりあえず、結果を待つように。」

 何とか終わったようだ。終わった人は、他の人の様子を見学していて良いらしい。

 見学の場所に行くと、誠士せいじがいた。

「おう。終わったんだな。凄かったなぁ。柊香の魔法。流石、ランクSって感じだ。」

「あはは...思いつきで咄嗟にやったからね。」

『ランクS』と小声で言ったのは彼なりの優しさだろう。しばらく見学していると、

 氷麗瑠ひらるの番がやって来た。担任の声が聞こえる。

「はい。次は...26番、高田たかださん。」

「はい。」

(あっ次氷麗瑠の番だ。誠士も凄かったけど、氷麗瑠はどうなんだろう...)

 誠士は、番号が2番と、柊香よりも早い。だから、様子を見ていたのだが、凄かった。高熱の炎を出して、マネキンの丸焼きにしていたのだ。見学の合間に、誠士のステータスを見ると、次のように表示されていた。


 遠藤えんどう誠士 種族:人間

〔総合評価〕

 ランクB (魔導師)

〔使える魔法〕

 炎魔法 レベル5 (最大)

〔武器〕

 炎属性を宿した鉤爪。

〔補足〕

 導々丘学園中等部 2年5組。

 一属性しか使えないが、炎属性の火力と、武道を組み合わせることにより、高い攻撃力を誇る。但し魔力が無い為、ランクB。


 (...毎度思うけど、何で僕だけじゃなく、他の人のステータスも異常に高いんだろう...)

 まるでチート集団みたいだ。あ、氷麗瑠が魔法を放とうとしている。氷麗瑠の手のひらから、冷気?が出ている。瞬間、マネキンはカッチコチに凍りついた。そして、氷麗瑠が手のひらをギュッと握ると、マネキンは粉々に砕かれた。わぁ...と思っていると、氷麗瑠が戻って来た。

「やっほー。柊香も誠士も凄かったねー。」

「いや、そんな事無いよ?」

「いやいや、俺から見ても凄いと思うぞ。」

 三人で話していると、

「あ、もう次優弥ゆうやの番だぞ?」

「っていうことは、もうラストかぁ。」

「早いね。」

 いち早く誠士が気づいて、それに氷麗瑠と柊香が反応する。

 「最後は、40番の...吉野よしのさーん。」

「はい。」

 優弥が前に出て、マネキンと対峙する。そして、魔法だろうか。手を天に突き出すと、優弥の手を中心にして、暗くなった。そして手にあったのは...ブラックホールだろうか。いや違う。闇の球が光を吸収しているから暗くなっているんだ。闇の球はどんどん大きくなってきている。それに比例して、さらに暗くなってきている。

 今は朝の9時ぐらいなのに、日没前の様な暗さだ。そして、限界まで大きくすると、優弥は手を振り下ろした。すると、球も急降下し、マネキンに襲いかかる。そして、轟音の後、球が消滅すると、マネキンも消えていた。柊香は直前に光魔法を駆使して見ていたが、どうやら球がマネキンを呑み込んだらしい。教師も生徒達も柊香も、啞然とした顔で見つめていた。

 ...実は柊香が光閃を放った時も同じ様な視線で見られていたのだが、当の本人は気づいていないらしい。教師は冷静さを取り戻し、軽く咳払いをした。それで生徒達は我に返った。そして、教師は、

「これでこのクラスの生徒のテストは終わった。結果は次の授業で個別に伝えるから、待っている様に。」

教師が告げると、ある者は項垂れたり、またある者は友達と話していたりしていた。

 その時、優弥がこちらに戻って来た。そして、戻って来るや否や、誠士には感心されて、氷麗瑠には問い詰められていた。優弥は困った様にこちらを見ていたが、柊香は苦笑するしか無かった。






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