第3話 魔法学園初登校

 透過魔法を巡る話を終えて、萌花めいか紬命ゆみと別れた柊香しゅうか氷麗瑠ひらるは、教室で話していた。ちなみに、光魔法や闇魔法のレベルが高いと、下位の透過ではステータスを覗けないらしい。と、紬命が言っていた。

「ねぇねぇー、柊香ー?」

「ん?どうしたん?」

「さっき言いそびれたんだけどさー、今日持っている魔法を使って、練習用のサンドバッg...じゃなくて、」

「今サンドバッグって言おうとした?」

「マネキンを消し去るテストがあるんだよ。」

柊香のツッコミを無視して、氷麗瑠は話を進めていく。

「それでさー、あたしってさ、氷魔法しか使えないから、どうやって消し去れば良いのか分からないんだよねー。」

「いや、別に消す必要は無いよ?」

「え?」

「消し去らなくても、原形を留めない感じにすれば良いらしいよ?」

(ふぅ...あらかじめ調べておいて良かった...)

 さっき柊香は会話の間にテストの内容について調べていたのだ。テストの内容を知らないと困るからだ。

「氷麗瑠の氷魔法なら、凍らせた後に砕けば、マネキンごと砕けられるんじゃない?それに氷麗瑠は、大魔法使いランクAでしょ?」

「そっかー、でもそれを言うなら柊香は、大魔導師ランクSじゃん?」

「「...」」

その時、クラス中の視線が柊香達に注目している事に気づいた。え?何か注目される様な事言ったかな?と戸惑っている柊香に対し、氷麗瑠は焦りながら何か誤魔化していた。

「あ、うん、その...ほら?あたし達ってランクそんなに高くないし?いつかASって事だよ。あっはは...」

その言葉で何か上手く誤魔化せたらしい。よくある事なのか、クラスの人達はため息を付きながら再び話し始めていた。

「ふぅ...なんとか誤魔化せた...」

「何で誤魔化していたの?」

「ん?柊香が言ったんじゃん。『目立ちたく無いから』って。あたしは別に目立っても気にならないけどさ、まぁ確かに、ランクAとか、Sにでもなれば目立つもんね...柊香って目立つの苦手でしょ?」

 そう言われてみれば...と柊香は思った。確かに目立つのはあまり好きではない。ましてやランクSはこの学園に10人もいないと言っていた。そんな存在にもなれば目立つだろう。

「うん。」と柊香が返事をしようとしたその時、キーンコーンカーンコーンと、チャイムが鳴った。朝休みの終わりを告げるチャイムだ。そして、鳴って少ししてから、担任が入ってきた。どうやら担任は元の世界と変わらないらしい。よく見るとクラスの人も元の世界と変わっていない。と、先生が口を開く。

「えーっと、今日はテスト日課なので、朝読書の時間はありません。」

いやシステムも同じかい!と柊香はツッコミたくなった。

「はい、今から教室の外に出て、名前順に並んでくださーい。テストはグラウンドでやります。」

 先生に言われてクラスの人が外に出て並んでいく。その様子を見て柊香も慌てて並びだした。柊香は名字が、大榎木おおえのきなので、前の方だ。つまり、テストも最初の方にやる、ということになる。


「はい、次は...2番さんの人どうぞー。」

(あぁ...やばい。次僕の番だよ...)

柊香は3番になるので、もうすぐだ。どうにかならないかと、前の人を見る。

《透過》

〔総合評価〕

ランクC (魔法使い)

〔使える魔法〕

風魔法 レベル3


と、表示されている。氷麗瑠達のステータスを見た後だからだろうか、何か見劣りするなと感じた。ただ、この学園ではこれぐらいのステータスが普通らしい。その前の人が何か呪文らしきものを唱えていた。

「風よ、今ここに顕現し、我の杖に集え!そして、鋭い刃と化し、彼の者を切り刻め!《エアスラッシュ》!!」

(ぶっ!?)

 ゲームにとか、異世界ものの小説にしか出てきなさそうな呪文を聞いて、柊香は思わず吹き出しそうになってしまった。しかし次の瞬間、その人の持っていた杖...否、ステッキ?から無数の風の刃が噴出され、マネキンを切り刻んでいた。しかし、柊香は感心すると言うよりも、あんな感じに唱えなくちゃ駄目なの?と思った。とてもじゃないが、恥ずかしくて無理だ。

(うーん、さっきの透過魔法もそうだけど、何だっけ...無詠唱?でやってたからなぁ...)

 柊香はどうするかなぁと思って顔を上げた。すると、前の人の魔法の効果の確認だろうか。担任とは違う教師らしき人物がサンドバッグ...もとい、マネキンの状態を見ていた。

「どうですか?」

前の生徒がおずおずとその教師?に尋ねていた。すると、教師?は、

「そうだなぁ...よく見ると手足が完全には離れていないな。...何度も言うが、結果は後日発表されるから、それまで待つように。」

それだけであまり良くない結果だという事が分かったのだろう。魔法の事をまだよく知らない柊香ですら分かる。と、その時、

「次は...2番、大榎木さーん。」

(あ、もう僕の番じゃん。どうしよう...水と光でどうやって原形を留めない形にすれば良いの...?......はっ!)

「大榎木さん?」

「はい!」

少し考えて、柊香の頭にあるイメージが浮かんだ。これなら...もしかするといけるかもしれない。柊香はそのイメージを元に、新たな魔法を思い浮かべてテストへと向かった。


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 テストの後の昼休み一一。魔法課の授業の担任である眞壁将太まかべしょうたと、導々丘学園中等部 第45期生の担任一一要は2年生の担任を交えての、職員会議が行われていた。数秒の沈黙の後、学年主任の先生がゆっくりと口を開く。

「今日私達が会議をすることになった理由は、2年生...いや、近年の生徒の魔法の成績が落ちているからですよね?眞壁先生?」

「そうですね。特に、実技試験の成績は酷いものです。...魔法と言うものは、本来、呪文を唱える必要は無い。イメージさえ掴めていれば、無詠唱でも十二分に威力を発揮できるんですよ。ただ、無詠唱だとイメージを掴めないから、昔の人は呪文と言うものを作った。最初は、《炎》や、《水》と言った簡単なものだったのに、15世紀から...16世紀辺りですかね...史実によると、当時ヨーロッパの方の貴族が、秘密裏に魔法を習得しようとしたらしく、」

「ちょ、ちょっと!今は魔法史の時間じゃないでしょう!良いから話を進めてくださいよ...」

危うく話が逸れるところだったのを、2組の担任が慌てて止める。

「すみません。簡単に言うと、その貴族達が呪文を長ったらしいものにした訳です。まぁ最近の生徒は呪文を唱えても中途半端な感じですが。」

 眞壁は疲れた様な、呆れた様な感じで話している。その時、学年主任の教師が、

「ところで、2年5組のあの生徒ですが。」

「あぁ、あの生徒か。」

「確か、大魔導師ランクSだとか。」

「2年5組ってランクSが二人もいるんでしたよね?」

「魔法課の教師にも引けを取らないとか。」

学年主任の言葉に他の担任が反応する。学年主任は手で制し、言葉を続ける。

「はい、眞壁先生もお分かりでしょう?あの二人は...まさに稀代の才能と言って良いでしょう。」

「えぇ、そうですね。その内の一人は、あのマネキンを木っ端微塵に切り刻んで、さらに消し炭にして、もう一人はマネキンを魔法によって呑み込んでしまっています。おまけに二人とも無詠唱。本当に凄いと、僕でも思いますよ。」

眞壁はさっきとは変わって、期待を込めた様な口調で話している。

「本当に、あの魔力は一体どこからやって来るのでしょうね...大榎木さんと...吉野よしのさんは。

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