第2話 みんなの魔法

 (ヘぇ...みんな凄い魔法を持っているんだなぁ...)

 最初は覗き見をする様で気が引けたが、見ていくと凄くて、夢中になって見てしまった。そして、紬命ゆみ達に声をかけられていなかったらそのままだっただろう。

「えっと、柊香しゅうかちゃん?どうしたの?さっきからボーッとして。」

「そうだよー。最近の柊香は何か変だよ?」

「大丈夫?もしかして疲れてるの?最近テスト多かったもんね。」

「いや、柊香は魔法上手いから、その可能性は低いと思うぞ?」

「うっ、それは...」

 三人とも心配そうにこちらの顔を覗き込んできている。同時に、柊香は罪悪感を覚えた。こんなに心配してくれるのに、自分は他人のステータスを勝手に見て...柊香はいたたまれない気持ちになった。

「うん...大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。僕は大丈夫だから...ごめんね?」

「謝らなくても大丈夫だよ。ただ、辛い時は無理しないで、ちゃんと言うんだよ?私だけじゃなくて、萌花めいかや、氷麗瑠ひらるちゃんも、柊香ちゃんの味方だからね?」

「ううん。そういう事じゃなくて...ごめん。僕、三人のステータス勝手に見ちゃったんだ。」

「え?」

三人揃って驚いた様な表情をする。気まずい沈黙が流れる。と、ここで氷麗瑠が口を開く。

「あのね、そんな事で罪悪感を感じるのなら柊香は優しすぎるよ?」

「え?」

こんどは柊香の方が驚いた様な表情をする。優しい?この僕が?柊香は二人の方を見た。二人も氷麗瑠に同調する様に頷いている。

「そうだよー。別に、ステータスを覗くぐらい、誰でもやっているしな。」

「萌花達の言う通りだよ。私だってたまに動物の力を使ってステータスを知る時もあるし...」

「そういう事だよ。別にそんな事を柊香が気にする事なんてないんだよ?」

「そ、そうなんだ...てっきりいけない事なんだと思っちゃって...」

 みんな別に気にしていないらしい。柊香はホッとしたのと同時に、まだまだ知らない事があるんだなぁと感じた。と、ここで紬命が透過魔法について補足の説明をしてくれた。もっとも、これを透過魔法と呼んでいるのは自分だけかもしれないけど。

「えっとね?さっきも言ったと思うけど、別にステータスを覗くのはよくある事なの。光魔法、それか闇魔法がレベル2以上あれば誰でもできるから。それで、光か闇がレベル4以上あると、更に深いところまで覗けるんだけど、それ以上は駄目なの。プライバシーの侵害になるからね。だから、普通はレベル2の段階で覗けるところまで。レベル2で覗けるのは、どんな魔法が使えるのか、それと基本情報かな。基本情報って言うのは、種族とか。」

「そうなんだね。あ、まずいかも。ちょっと深いところまで覗いちゃったかも。」

「あ、そうそう、知り合いの場合は、名前とかの情報も表示されるから大丈夫だよ。それに、私達は友達だし...別に今更って感じだもん。」

紬命の言葉に、柊香は再三にわたり、安心すると同時に、また謝った。...三人には謝らなくても良いと怒られてしまったが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る