第87話 5月1日/リア・クラークは布マスクに『無味無臭』の刺繍を終えて、実家からの荷物を受け取る

今日は、5月1日。

私がこの世界に来た時も、5月だった。

この世界と日本が、同じような日付なのが、すごく不思議だと思いながら、世話係のクロエが女子寮の自室の壁に貼ってくれたカレンダーを見つめる。

私が、部屋にカレンダーがあったらいいのにと言ったら、クロエが作ってくれたのだ。

4月の分は基礎クラスにいた時に貰ってたけど、5月の分は持ってなかった。


まだ家からヘルメットと鐙は届かない。

私の手紙は母親に届いて、ヘルメットと鐙の試作をしてくれるという話になったけど、現物はまだ届かない。

だから私は引きこもって刺繍文字を縫ったり、図書館で本を読んだりしている。


『重力半減』の刺繍文字は完成して、食堂のトレイの上に敷いて使っている。

ドロシーは私の真似をして、何も刺繍していない布をトレイに敷いている。

ドロシーの、ベッドに掛けるカーテンの話だけど、ドロシーはすっかり興味を失ってしまったみたい。

子どもあるあるだよね。夢中になって、すぐ飽きる……。


ダレルとライナスは初級クラスの『乗馬』の授業を頑張っている。

ドロシーは『乗馬』の授業の単位を取って、他の授業をいろいろ受けているところ。


やっとゲットできた『空間収納』スキルには、ハムとチーズを挟んだパンを一つ入れている。

私の『空間収納』スキル『現在、保存できる食料は一種類/一つのみ』なんだよね……。

入れているハムとチーズを挟んだパンは時々取り出して確認してるけど、劣化はしてないと思う。

『空間収納』スキルを使い続けていても、身体に疲労感は無いのは嬉しい。


『重力半減』の次に覚えた『無味無臭』の刺繍は『臭』の文字の刺繍が終われば完成だ。

布マスクを作って、そのマスクに刺繍文字を縫っている。

マスクに縫っているから『無味無臭』の刺繍文字は『重力半減』より小さくて、だから刺繍に時間が掛かる。


朝ご飯を食べ終えて、お腹も満ちていい感じだし『無味無臭』の刺繍を頑張ろう。


裁縫道具を出し、私は地道に刺繍を始める。

今日中に布マスクに『無味無臭』の刺繍ができたらいいな。

私が『臭』の文字の刺繍を終えたその時、扉をノックする音がして、箱を両手で抱えたクロエが部屋の中に入って来る。


「リアさん宛てに荷物が届いていますよ。ご実家からです」


「クロエさん、持ってきてくれてありがとうございます!!」


ヘルメットと鐙の試作品を送ってくれたのかも!!

私は裁縫道具を片づけて、クロエが床に置いた箱に歩み寄る。

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