第84話 リア・クラークはヘレン・ミレンの『奇跡発動』スキルの話を聞く
「僕たちをこの世界に来させるきっかけになったのはヘレン・ミレンが『奇跡発動』スキルを使ったせいなんだ」
「『きせきはつどう』スキル。すごそうな名前ですね……っ」
私は刑事さんの言葉を聞いて言った。気持ちが上がる。
たぶん『奇跡』が『発動』するスキルなのだろう。すごい。
実際、異世界に引き込まれる本が、日本の中学校の図書室に出現したし……。
刑事さんは私と司書さんを交互に見て、口を開く。
「『奇跡発動』スキルはヘレン・ミレンが何年にも渡って願い、祈り続けて取得したスキルだ。ヘレン・ミレンが願った『奇跡』は『ロザリンド・ロレイン・ネルシア王女に神罰を与えること』」
「ロザリンド・ロレイン・ネルシア王女って、他人の婚約者と恋人気取りでいい気になってる嫌な人なんですよね? 噂は聞いてます」
私の言葉に、刑事さんは苦笑して口を開いた。
「『僕』は、王女がそこまでひどい女の子とは思わないけどね。ヘレンの婚約者の男が最悪だと思う。王女と恋をするならヘレンとの婚約を解消すればよかったし、婚約を継続するなら王女と離れたらよかったんだ」
確かに!!
刑事さんの言葉は正論だ。さすが正義の警察官だ。
「刑事さん。ヘレン・ミレンの恋愛事情の話も興味深いけど、今は『奇跡発動』スキルの内容を話して欲しいわ」
司書さんが、恋バナに逸れた話を軌道修正する。
刑事さんは司書さんの言葉に肯き、口を開いた。
「『奇跡発動』スキルを使うためには、魂が必要なんだ。ヘレンは自分の魂を捧げれば良いと考えていたけど、ヘレンの魂だけでは足りなかった」
「それって、リアの魂も捧げられたってことですか……?」
6歳の女の子の魂を奪うとか、この世界の神様は鬼畜なのでしょうか。
……日本でも、悲惨なことはあったけど。地震でお墓も倒れるし、神社も損壊してたけど。
眉をひそめて私が言うと、司書さんが困ったように笑って口を開く。
「死にたがっている人の魂が捧げられたみたい。私の身体の持ち主は『死にたい』ってずっと思ってたんだけど、リアさんの記憶はどう?」
私は『リア・クラーク』の記憶を辿る。
……リアが「勉強嫌い!! 勉強するなら死ぬ!!」って喚いてる……。
私はリアが『死ぬ』と言っていたと伝えるために口を開いた。
「記憶では、確かに『死ぬ』って言ってますけど、でも子どもが覚えたての言葉を使ってるだけじゃないですか? 死ぬってどういうことか、本当の意味で分かってるとは思えないですけど」
「そのあたりがこの世界の神様のおそろしいところだね。日本でも『言霊』とか『言葉に意志が宿る』と言う人もいたけど」
私の話を聞いた刑事さんがしみじみとした口調で言い、話を続ける。
「とにかく4人の魂が捧げられて奇跡が発動した結果、ヘレンが恨みまくっていた王女に天罰が下り、僕たちは異世界転生的なことになってる訳だ」
刑事さんの話を聞いて、中学校の図書室に『ネルシア学院物語』という本があって『主人公を選んだ』読者たちがこの世界に転生することになった経緯は、なんとなくわかった。
でもこの世界の神様って日本にも干渉できるの? すごくない……?
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