第81話 リア・クラークは念願の『空間収納』スキルを取得する

目を開けると、今は見慣れた天井が視界に映る。

私、寝ちゃってた……。

夢を見てた気がするんだけど、あんまりよく覚えていない。

黒猫が出てきた気がするけど……。


「今度こそ『空間収納』スキル覚えてるかなっ」


なんか、今度こそ『空間収納』スキルを覚えてる気がするっ。

私はわくわくしながらベッドから跳ね起き、引き出しにしまっていたスキルケースから、自分のスキルボードを確認した。



異世界の記憶 → 読書 → 清潔 → 夜目

  ↓      ↓

 空間収納   刺繍文字



「『空間収納』スキル覚えてるー!! すごいー!!」


私は思わず叫んだ。やったー!!

『空間収納』スキルの説明を見なくちゃ!!

私はそう呟き、スキルボードに記載された『空間収納』をタップする。

『空間収納』スキルの説明文が表示された。



スキル名 空間収納


食料を保存したいという強い欲望を持つと知識と探求の神バァンに認定された者に与えられる。

空間収納スキルで収納した物は劣化せず、入れた時の状態を保ち続ける。

現在、保存できる食料は一種類/一つのみ。



「『空間収納』スキルしょぼいー!! 収納できるの『食料』限定!? しかも一種類で一個しか持てないの!? 手で持った方がもっと持てるよ!!」


『空間収納』スキルの説明文を読み終えた私は、一人、部屋の中で叫んだ。

なんでこんなにしょぼいスキルになっちゃったの!? それと同じくらい気になるのが『異世界の記憶』スキルから派生している点だ。

それって『異世界の記憶』スキルを持ってないと『空間収納』スキルをゲットできないってこと……?

じゃあ、この世界で『空間収納』スキルを持ってる人って、私と同じ、転生者ってこと?


「『空間収納』って、隠さなきゃいけないスキルっぽい……?」


スキルを人に話してはいけないと言われているから、根掘り葉掘り聞かれることはないと思うけど、でも、秘密が増えるのは心が重い。

あー!! 人前で『空間収納』スキルを使えないの不便そうー!!


「いろいろ期待してがっかりしたらお腹空いた……。食堂に行こう……」


私のお腹は空腹を訴えている。

私はスキルボードをスキルケースに入れてスキルケースを机の引き出しにしまい、学生証を持って食堂に向かった。


女子寮から直通の食堂は、制服の生徒たちが多くいた。

授業を受けている生徒が多いからだろう。

『5』のつく日はネルシア学院の授業がお休みなので、食堂は、今の私のように部屋着姿の生徒ばかりになる。


今日のお昼ご飯はなんだろう。

作ってもらって言うのも気が引けるけど、私はラーメンが食べたい……。

ラーメン。

『井上愛子』だった頃、家で食べるのは主にインスタントラーメンとカップラーメンだった。

新型コロナが蔓延してからは、外食する回数は減っていたけど、ラーメン屋さんがたくさんあって、ラーメンを食べたくても食べられないということは考えられなかった。


ラーメンって……どうやって作るんだろうね……。

麺は小麦粉で作るのかなあ。

おいしいカップラーメンとか、お得な価格のインスタントラーメンを探したことはあるけど、ラーメンの麺やスープの作り方は知らない。


私が読んだ小説の中で、ラーメン作りに命をかけた主人公はいなかった気がする……。

ファンタジー小説とか恋愛小説は、知識としては全然役に立たないんだなあと思い知っている。読んでいる時は楽しかったんだけど……。


私はラーメンのことを考えながら、食堂の列に並ぶ。

今日の午後、転生者の人と話す時に、ラーメンの作り方を知ってるか聞いてみようかなあ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る