第78話 リア・クラークは副担任と食堂に行き、ヘルメットや鐙の話をするのを拒否して、自室で家への手紙を書く

私は初めての『乗馬』の授業を終え、副担任に、乗馬服とブーツを購入した生徒たちと共に購買へと連れていかれた。

購買で、各自の学生証を使って、乗馬服とブーツを購入した清算をするのだ。

購入金額は、副担任が回収した値札を見て行われた。


『乗馬』の授業を受けていた私たちは馬臭さに麻痺していて、購買内にいた生徒や会計をした職員に顔をしかめられてしまった。

『清潔』スキル、使って無いからなあ……。


その後、私以外の生徒は解散となり、私は副担任と共に食堂に行くことになった。

『ヘルメット』と『鐙』の話をするためだ。

私、結局、白い子馬にはヘルメットつけずに乗ったんだよね。

副担任に手綱を引いてもらっていたとはいえ、何事もなくてよかった。


食堂に入る前に、私は、自分の髪にだけでも『清潔』スキルを使ってみた。疲れた。

副担任は『清潔』スキルを使う様子は無い。乗馬が好きな人は馬臭さに耐性があるのかもしれない。


食堂は、少し遅い朝食を取る生徒たちの姿がちらほらとある程度で、空席が多かった。

私と副担任が馬臭くても、嫌な視線を向けられることがなくてほっとする。


私と副担任は、それぞれに紅茶を飲むことにして会計を済ませ、テーブルを挟んで向かい合った。

副担任は生徒で、話を聞かせるように命じた私に、飲み物を奢ってくれることはなかった。残念。


「時間を取ってくれてありがとう。それでは早速『頭を守る物』の話を聞かせてくれる?」


副担任が私に微笑んで言う。

言葉だけで感謝を示されてもなー。

私自身のヘルメットや鐙を、自前で用意した方がいい気がしてきた。

副担任と話す気が失せた私は、彼女に視線を向けて口を開く。


「私、やっぱり話すのやめます。ごめんなさい」


「えっ!? どうして!?」


「うちの商会で、商品化できるかもしれないので。紅茶を飲み終えたら失礼します」


私はそう言って、熱い紅茶を冷ましながら飲み始める。

副担任は気まずい顔をしていたが、私に掛ける言葉は無いようだ。

私は紅茶を飲み終えて席を立ち、カップを返却して食堂を出た。

家に手紙を書いて『ヘルメット』と『鐙』を作ってもらえるか聞いてみよう。


女子寮の自室に戻った私は『ヘルメット』と『鐙』を作ってもらえるか尋ねる内容の手紙を書き、封筒に入れた。

家への手紙は、漢字を使わず、カタカナだけで書いたり、カタカナとひらがなを交えて書いたりしている。

たまにうっかり、漢字を書いちゃうこともあるけど……。

というか、最初の頃は、何も考えず普通に日本語を使って手紙を書いてしまっていたけど……。

迷惑少年『おおのしょう』と一緒にいた彼に、助けてもらったお礼の手紙を書いてから、自分が書く文章に気をつけるようになったのだ。


私の手紙は主に母親が読んでいるようだ。父親に渡すと何度も泣きながら手紙を読むからうっとうしいんだって。

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