第77話 リア・クラークは『鞍装着』スキルを目の当たりにして感動し、この世界に鐙が無いことを知る

厩舎の掃除と藁の入れ替えを終えたドロシーは、厩舎から出てきた。

……ドロシーが馬臭い。私の身体や髪からも、馬臭い匂いが発生しているのだろうか。嫌だ。

『乗馬』の授業が終わったら、クロエに『清潔』スキルをかけてもらいたい。

クロエに会えなかったら、自分で自分に『清潔』スキルをかけてみよう。

椅子に座って『清潔』スキルを使えば、すごく疲れても倒れることはないはず。たぶん。


「厩舎の掃除が終わったから、皆で馬場に行こうっ。あー。やっと乗馬ができるっ」


ドロシーが弾むような足取りで先頭に立ち、歩き出す。

私たち『乗馬』の授業初参加の生徒たちは、ドロシーの後に続いた。


ドロシーが案内してくれた馬場では『乗馬』の授業を受けている生徒たちがいた。

オリンピックとかでちょっと見たことがある、馬に乗って『障害』を飛び越えるということをやっている生徒たちもいる。

たぶん、あれは『乗馬』じゃなくて別の授業なんだろうなあ。


子馬たちは少し狭めの馬場で、のんびり歩いたり座ったりしている。

可愛い。癒される。ずっと見てたい。見てるだけでいい。


副担任に、初めて『乗馬』の授業を受ける私たちを引き渡し、ドロシーは嬉々として『乗馬』の授業を受けている生徒たちのところに走って行った。

副担任は私たちを子馬の馬場に先導し、私たちは子馬と触れ合った。

子馬、可愛いー!!


「どの子に乗りたいか、決めた? この子に乗る?」


白い毛並みの子馬を撫でている私に、副担任が問いかけてくる。


「見て、撫でてるだけでいいです。可愛い」


私がそう言うと、副担任が苦笑する。


「そんなこと言ってたら『乗馬』の授業の単位、取れないわよ。今、あなたが撫でている、その白い子馬に乗ってみたら?」


「でも鞍もついてないし、鐙もないですよね……」


「『あぶみ』ってなに?」


私の言葉に副担任が首を傾げて言う。

えっ!? この世界、鐙無いの!?

鞍はあるっぽい。あるよね。だって、馬に乗ってる生徒、鞍に跨ってるし……。


「頭を守る物の話と一緒に『あぶみ』の話も聞かせてちょうだい。じゃあ、とりあえず白い子馬に鞍をつけるわね」


副担任はそう言って『鞍装着』スキルを発動させる。

すごいー!! めちゃくちゃマニアックなスキル!!

スキル発動後、子馬の背には鞍が装着されていた。

乗馬特化のスキルってあるんだなー。すごい。この世界すごい。


「じゃあ、子馬に乗せるわね」


副担任はそう言って、私を抱き上げて白い子馬の背に乗せた。

うわー!! 馬に乗っちゃったよ、私……!!

子馬なので視界の高さが劇的に変わったわけじゃないけど、でも、いつもの目線より世界が広く見えて感動する。


私は副担任に手綱を引いてもらって、子馬に乗って馬場を一周し、子馬から下りた。

私以外の生徒たちも、それぞれ選んだ子馬の背に乗って、副担任に手綱を引いてもらって馬場を一周する。

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