第73話 リア・クラークはドロシーと朝食を食べ『乗馬』の授業を受ける決意を固める

私とドロシーはそれぞれの『挟みパン』を食べながらお喋りをする。


「リアは『乗馬』の授業は取らないの? 馬に乗るの、楽しいよー」


ドロシーはマヨネーズで和えたっぽい卵とハムを挟んだ『挟みパン』を飲み込んで、言う。

ドロシーは『乗馬』の授業を受け続けたくて、わざとテストで落第点を取っているくらい乗馬が好きだ。


「でも馬って大きいし、落馬したら怪我しそうで怖いんだよ」


私は手に持っている焼いたベーコンとトマトとレタスを挟んだ『挟みパン』を見つめて言う。


「小さい子は、子馬に乗ってるよ」


「えっ!? 足がぷるぷるしてる子馬に乗るの!?」


私がそう言うと、ドロシーは笑い出した。


「リアはお金持ちの子なのに、生まれたての子馬を見たことがあるの? 授業で使う子馬はしっかりと立って歩けるよ」


「そっかぁ……」


私はほっとして言った。

子馬なら、いきなり暴れ出したり、突然走り出したりしないのだろうか。

ドロシーが『乗馬』の授業を取っているうちに、一回、行ってみようかな……?

私はドロシーに視線を向けて口を開く。


「今日の午前中って『乗馬』の授業あったよね?」


「あるよー!! 一時間目からあるよ!! 一緒に行こうよっ!!」


「うん。ドロシー、よろしくお願いします」


「任せてっ」


ドロシーは私に笑顔でそう言って、手にしていた『挟みパン』にかぶりつく。

私も、乗馬の授業中にお腹が鳴らないように『挟みパン』にかぶりついた。


朝食を食べ終えた私とドロシーは食堂前でいったん別れた。

支度を終えた後、ドロシーが私の女子寮の自室に迎えに来てくれることになっている。

勢いで『乗馬』の授業を受けると決めてしまったけど、私、大丈夫だろうか。

落馬とかしないよね……?


不安な気持ちを抱えながら、私は首から下げている鍵で自室の扉を開け、中に入る。

とりあえず、授業を受ける準備をしてドロシーを待とう。

子馬に乗るのが怖くなったら、言えばいいよね。むりやり乗せたりしないよね……。


私は手提げ鞄に筆記用具とノートを入れ、ドロシーを待つ。

やがて扉をノックする音がした。

私は手提げ鞄を持って、扉を開けた。


「リア、お待たせっ」


「ドロシー。その恰好、なに? 制服じゃないの?」


ドロシーはシャツに皮のベストを来て、皮のズボンにベルトを巻き、そして皮のブーツを履いている。

ドロシーは満面の笑みを浮かべて私を見つめ、口を開いた。


「『乗馬』の授業を受ける生徒は『乗馬服』を着るんだよっ。スカートじゃ、乗馬は無理だよ。リアは今日が『乗馬』の初授業だから『乗馬服』とブーツ選びから始めると思うよ」


「総額、どれくらい……?」


「んー。わかんないっ。先生が生徒の学生証から代金が引き落とされるようにしてくれるって言ってた」


怖い……っ。

『井上愛子』の知識によると、乗馬の道具は高価っぽかった気がする。

『リア・クラーク』の家はクラーク商会を営んでいてお金持ちっぽいから、心配しなくてもいいかもしれないけど……でも『乗馬服』とブーツの代金がどれくらいかかるのかは、買う前に聞こう。絶対にそうしよう。


私は自室に施錠して、ドロシーに手を引かれて歩きながら『乗馬服』とブーツの代金がどれくらいなのかと考えを巡らせた……。

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