第72話 リア・クラークは学生生活24日目日目の朝を迎え、お手洗いでドロシーと会い、サンドウィッチを『挟みパン』と言うことを知る
朝です!! 起きました!! スキルボードを確認しました!!
『空間収納』スキルは覚えていませんでした……。
本当、もう、何なの……?
『刺繍文字』っていう、特に欲したわけじゃないスキルをあっさり覚えたかと思えば、欲しくて仕方ない『空間収納』スキルはいつまで経っても覚えない……っ。
あー。本当、他の人のスキルボード見たい。皆のスキルボードってどうなっているんだろう……。
「脳内で愚痴ってても仕方ないよね。着替えよう……」
私は寝間着から制服に着替え、脱いだ寝間着をクロエに『清潔』スキルをかけてもらう用の箱に入れる。
髪を梳かし終え、顔に清潔スキルをかけた私は、倦怠感を感じつつ、伸びをした。
トイレに行って来よう。トイレに行ってそのまま食堂に行きたいから、学生証も持っておこう。
私は学生証を制服のポケットに入れて、部屋を出た。
私が女子トイレの個室から出ると、トイレに入ってきたドロシーと行き会う。
「おはよう、リア。あたしがお手洗いから出るまで待っててよ。一緒に食堂に行って朝ご飯食べよう」
「うん。扉の側で待ってるね」
私はドロシーにそう言って、自分の両手に『清潔』スキルをかけた。
ドロシーは個室に入る。
そういえば、この世界はトイレって言わないんだよね……。
うっかりトイレって言わないように気をつけよう。
私はお手洗いを出て、扉から少し距離を取って立つ。
お手洗いに来る人の邪魔になったらいけない。
「リア、待たせてごめんねっ」
お手洗いの扉から出てきたドロシーと合流し、私たちは食堂に向かった。
朝の食堂はそれなりに混んでいる。
あっ。ライナスとダレル、見つけたっ。
「ドロシー。あそこにライナスとダレルがいるよ」
「そうだね。でもあたしたちが料理を取り終えた頃には食べ終えて食堂を出て行ってそう」
「そうかも」
私とドロシーはそんなことを言い合いながら、食堂の列に並ぶ。
「今日は『挟みパン』の日みたい。嬉しいっ」
「『はさみぱん』?」
ドロシーの言葉に、私は首を傾げる。なんですか、それ?
「パンにいろんな物を挟んで食べるんだよ。だから『挟みパン』っていうんだけど、お金持ちの子は食べないのかなあ。村では結構食べてたよ」
それはもしかして、サンドウィッチのこと……?
パンは『パン』で、プリンは『プリン』で、サンドウィッチが『挟みパン』なんだ。
そっかぁ……。この世界、私には時々難しい。
私は焼いたベーコンとトマトとレタスを挟み、ドロシーはマヨネーズで和えたっぽい卵とハムを挟んだ。
パンは、コッペパンだ。この世界は細長くて真ん中に切れ込みがあるパンのことを、コッペパンっていうのかな……。
そんなことを考えていた私の視界の端に焼いたソーセージが映る。
焼いたソーセージが置いてあるなら、ホットドックにもできたかも。
ドロシーはクリームの絞り袋を手に、はしゃいでいる女子生徒を見ながら口を開いた。
「パンを一つ食べたらお腹いっぱいになりそうだし、クリームを挟んだ『挟みパン』は、食べられたら食べることにする?」
「そうだね。残すのもったいないもんね」
ドロシーの言葉に私はそう言った。
食事代は無料じゃない。重さを測り、決められた料金分を、学生証から引かれているのだ。
ドロシーは飲み物に紅茶を、私はコンソメスープを選んで会計をし、食事をするためにテーブルに向かった。
ライナスとダレルの姿は見えなかったから、私とドロシーの予想通りに、食事を終えて出て行ってしまったのかもしれない。
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