第71話 リア・クラークは『重力半減』の『力』の一文字を縫い終え『転生者』からの手紙の返事を書き忘れていたことを思い出す

出来た!! 縫えた!!

私はランプの光に照らされた室内で布を掲げて広げた。

布には『重力半減』の『力』の一文字が大きく縫ってある!!

『力』以外は難しくて心が折れたの……。

そして『夜目』スキルを使いながら『刺繍文字』スキルを使うのは、私の疲労がひどくて無理でした。

次は『半』を縫おう。『力』より面倒くさいけど『重』『減』よりは簡単だ。


私は椅子に座りながら伸びをしていると、扉をノックする音がした。

扉が開き、部屋に入ってきたのは私の世話係のクロエだ。


「リアさん。もう寝る時間ですよ。髪と目に『清潔』スキルをかけますね」


「あっ、はい」


私は持っていた布を机の上に置き、クロエに『清潔』スキルをかけてもらう。

私に『清潔』スキルをかけた後、クロエは少し困った顔をして口を開いた。


「リアさん。わたしが以前渡した手紙の返事って、まだ書いていないの?」


「手紙の返事? ……あーっ!!」


転生者からの手紙!!

そういえば貰ってた!!

返事を考えるのが面倒くさくて、考えるのを後回しにしてたらすっかり忘れてた!!


「リアさん、手紙のことを忘れてたのね。仕方ないわ。そういうこともある」


「ごめんなさい……」


「さっき、リアさんと別れた後に、わたしの友人がわたしの部屋を訪ねてきて、リアさんと話したいというの。明日の午後、時間を取ってもらえる?」


「明日ですか……?」


今日寝て起きたら、明日になっちゃう!!

私、まだ転生者とどう向き合えばいいのかわからないのに!!


「リアさんは『初級クラス』の授業のほとんどの単位を取り終えているから、明日の午後なら時間、空けられると思うんだけど……」


世話係のクロエは私の単位の履修状況をきっちり把握している!!

……断れない。逃げきれない。


「わかりました。明日、お昼ご飯を食べたら自室にいるので、訪ねてほしいと伝えてください」


「無理を言って、ごめんなさいね。リアさん。わたしも同席するから安心してね」


「いえっ。それは大丈夫ですっ」


『転生者』同士の話に『転生者』ではないクロエが混じったら話がぐちゃぐちゃになりそうで怖い。


「そう? わたしの友人は信頼できる女性だから、リアさんがそう言うなら、わたしは付き添いを控えるわね。今から、友人にリアさんが明日の午後に、リアさんの部屋で会ってもいいと言っていたと伝えてきてもいいかしら?」


「はい」


私は覚悟を決めてクロエに肯く。

クロエは私に微笑んで、部屋を出て行った。

それにしても私以外の『転生者』って誰なんだろう?

話が通じそうな人だったらいいけど。

手紙の返事を出さなかった私を責めて突撃してくるような性格じゃないっぽいから信頼できそう……?


私は考え事をしながら寝間着に着替え、着ていた制服はクローゼットにしまう。

さっきクロエに『清潔』スキルをかけてもらったから、制服もブラウスも綺麗になっている。

それからランプの明かりを消して、ベッドに横になり『空間収納』スキルを得たいとひたすら言葉にして願い続け、ものすごい疲労感を感じた直後に寝落ちした。


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