第70話 リア・クラークは女子寮の自室に戻り、刺繍文字の『重力半減』を刺繍し始める

生徒会室から女子寮の自室に戻った私は、ベッドにダイブして息を吐く。

疲れたー!! もう『調停』には呼ばれたくないー!!

疲れたから、晩ご飯まで寝ちゃおうかなあ……。

でも寝過ごして晩ご飯を食べそびれたら悲しいよね……。


「気合を入れて起きようっ。『刺繍文字』スキルの検証をしようっ」


私は自分に気合を入れてベッドから起き上がり、家から送ってもらった布地と裁縫道具を用意した。

私が今、一番重いと思ってるのが、食事を乗せたトレイなんだよね。

だから、唯一できるという『刺繍文字』の『重力半減』を刺繍した布を、木のトレイの上に置いて、その上に料理を乗せたお皿を置いたら重さが半分になるかも?

それが成功したら、ドロシーとのお喋りで思いついた『風呂敷』のような物を作って『重力半減』って刺繍しよう。

母親に手紙で『風呂敷』のような物を売っているかと聞いたら、売っていないと返事を貰ったんだ。


「この布地の大きさが、食堂に置いてあるトレイの大きさっぽい?」


布地は少し小さくても、少し大きくてもいいと思うから、ざっくりと選んじゃおう。

私は手にしているクリーム色の布地の端を折って、白い糸で縫い始める。

布地の端の処理を終えると、布地の右下に『重力半減』と刺繍をし始めた。

……難しいんですけど!!

小さい文字で縫うのは、私には無理だった!!

私はぐちゃぐちゃになってしまった文字の糸を取り去り、大きく『重力半減』と刺繍をし始めた。

カッコ悪いけど仕方ない……!!


必死で『重力半減』と刺繍をしていると扉をノックする音がした。

扉が開いて、現れたのはクロエだ。


「リアさん。晩ご飯の時間ですよ」


「えっ!? もう!?」


私が驚いて刺繍の手を止め、部屋にある時計を見ると夜の7:20をさしていた。


「生徒会室に呼ばれて疲れてしまって、寝過ごしたのかと思って様子を見に来たんですけど、来てよかったみたいね」


「クロエさん、ありがとうございます!!」


私は針を針山にさして立ち上がり、クロエに深々と頭を下げる。

私の学生生活に、世話係のサポートは必須です……。


その後、私はクロエと一緒に晩ご飯を食べて、クロエに口の中に『清潔』スキルをかけてもらった。


「では、リアさんが眠る頃に部屋に行って、髪や身体に『清潔』スキルをかけますね」


「はい。よろしくお願いします」


私も自分で『清潔』スキルをかけることができるけど、まだ慣れてないから、スキルを使うとものすごく疲れるんだよね……。

自分の口の中や、小さな両手なら綺麗にすることができるけど、髪や身体全体を綺麗にするのはきつい。

寝る前『空間収納』スキルを取得したいと念じる時に、疲れ果てているわけにはいかない。


私とクロエは食堂前で別れ、私は女子寮の自室に向かった。

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