第68話 リア・クラークは世話係のクロエに案内されて生徒会に向かう
扉が開き、部屋に入ってきたのは私の世話係のクロエだった。
「リアさん。生徒会からの召喚状、確認しましたか? リアさんは生徒会室の場所、わかります?」
「……わかりません」
「じゃあ、わたしが生徒会室に案内しますね」
「あの、どうしても行かなくちゃダメですか? たとえば具合が悪くて行けなくなったらどうなるんですか?」
「その場合は、別の日を指定して召喚状が届くはずよ。女子寮も生徒会室もネルシア学院内にあるから、いつかは召喚されることになるわよ」
……私は召喚から逃げられないらしい。
その後、召喚状に書いてあった時間の十分前に自室を出た私は、クロエに案内されて生徒会室に向かった。
……ああ、行きたくない。
私の足は重く、心は重い。
深いため息を吐いた私を振り返り、クロエは苦笑して口を開く。
「リアさんは入学式に見た『真偽の月水晶』のことを覚えている?」
「はい。自分の名前を言って『真偽の月水晶』に触れて、月水晶が白く光れば本人確認をしました」
「あの『真偽の月水晶』は、ネルシア学院の入学式以外は、基本的には生徒会室に置かれてるの。生徒同士や、教師と生徒の諍いをおさめるために使われるのよ。生徒会の役員にいくつか質問されて『真偽の月水晶』に触れて終わりだと思うわ」
「クロエさんも生徒会から召喚状を受け取ったことがあるんですか?」
「わたしは無いけど、わたしの友人が……わたしが落ちぶれたら、あっさり切られたから、元友人と言ったらいいのかしら……男子生徒を二股かけていて、訴えられたことがあったわ」
また、クロエの重い話を聞くことになってしまった。
もう余計なことを言わずに、足を動かそう。
その後、私とクロエは言葉を交わすことなく歩き、そして生徒会室前に到着した。
「リアさん。女子寮から生徒会室の道は覚えた?」
クロエに問いかけられた私は肯く。
たぶん、一人で女子寮の自分の部屋まで帰り着けると思う。
「じゃあ、帰りは迎えに来なくてもいいわね。頑張ってね」
「クロエさん、ありがとうございました」
私がお礼を言うとクロエは微笑み、去って行った。
ああ。入りたくないけど、生徒会室に入らなくちゃ。
私は扉をノックしてノブを回す。
生徒会室は『井上愛子』だった時に家族旅行をして泊まった、ちょっと豪華なホテルの一室のようだった。
テーブルの上には『真偽の月水晶』が置かれている。
テーブルを四方に囲む皮張りのソファーには、私を助けてくれた彼と、見覚えのない顔の生徒が二人座っていた。
もしかして、私が一番最後に来たの? まだ約束の時間じゃないのに、皆早く来過ぎじゃない……?
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