第51話 リア・クラークはエドナから『ローランド・カーク』の母親がシングルマザーだと知らされる
「カーク男爵の妹君というのは13年前に問題を起こした方ですよね。私の世話係から『ローランド・カークには気をつけるように』と忠告を受けました」
ボーイッシュな女子生徒、エドナが言う。
「ローランド・カークって、リアに話しかけてきた金髪で青い目の人のこと?」
エドナの言葉を聞いたドロシーが問いかける。
私に話しかけてきた『金髪で青い目の人』というのは私と同じ転生者『おおのしょう』のことだ。
ドロシーに、エドナが肯く。
転生者『おおのしょう』の現在の名前は『ローランド・カーク』というらしい。
「エドナ様。カーク男爵の妹君が起こした問題というのは?」
レオナがエドナに問いかける。
レオナとエドナって名前が少し似てる気がする。見た目は全然違うし、喋り方とか雰囲気、声も全然違うから二人を間違えることは無いけど。
日本でも、同じ名前の子とか、似た名前の子はたくさんいた。
自分以外の『愛子』という名前の同年代の女子には、生きている間、出会うことはなかったけど。
『あい』ちゃんや『愛』ちゃんはいた。名前に『子』がつく女子は、私以外には、ほとんどいなかったと思う。
私が日本のことを思い出してぼーっとしているうちに、話が進んでいく。
「カーク男爵の妹君は侯爵令嬢と婚約している伯爵令息に横恋慕して、その、不適切な関係になったとか」
エドナは言いにくそうに、そう言った。
よこれんぼ。
文脈から察すると、略奪愛ということだろうか。
婚約者を奪ったのであれば、不倫になるの? 謎だ。
「ふてきせつな関係って、なあに? どういう意味?」
ドロシーの言葉に、テーブルを囲んでいる女子生徒たちは沈黙した。
私もどう答えていいのかわからずに俯く。
「人の恋人を奪っちゃうのは『泥棒猫』ってこと?」
「そうね。そういうことですわ」
自分で結論を出したドロシーの言葉をレオナが肯定する。
「でも、恋人を奪うことがそんなに問題になるの? 13年前も前のことなのに?」
ドロシーは不思議そうに言って、首を傾げた。
ドロシーに同意。私もそれが気になる。
日本でも芸能人やスポーツ選手の不倫報道はあったけど、一か月くらい経つと、どうでもいい話題になっていた。
13年前も前の『不適切な関係』を覚えている世話係がいて、わざわざ『ローランド・カークには気をつけるように』と忠告をするなんて、大げさなような気がする。
「カーク男爵の妹君は、未婚の身で子を産んだ。ローランド・カークは伯爵令息の子息だそうです」
ローランド・カークの母親はシングルマザーなんだね。日本では、よくある話だ。
私はエドナの話を聞いてそう思ったけど、テーブルにいる女子生徒たちはローランド・カークの母親を『ふしだらだ』と責めている。
ドロシーだけは責めてはいなかったけど、困惑した表情だ。
この世界ってシングルマザーに厳しいの……?
夕食の時間になったようで、食堂にはパンやおかず、スープが並ぶ。
料理のいい匂いが立ち込めてきて、すごくお腹が空いて来た。
「いつまでもテーブルを使っていては申し訳ないわよね。半数ずつに分かれて、食事を取りに行きましょう」
レオナの言葉に私たちは肯いた。
空腹ではお喋りを楽しめない。
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