第49話 リア・クラークとドロシーは食堂でレオナ・ミレンと出会う
夕方だというのに、食堂は人で賑わっていた。
「空いてる席、無さそうだねえ」
私は食堂内のテーブル席を見渡して言う。
「飲み物だけ貰って、壁際で立って飲む? 話してたら喉乾くだろうし」
「そうしようか」
ドロシーの提案に私は肯き、ティーポットとティーカップが置かれたテーブルに向かう。
立ち飲みなんて、行儀が悪いかもしれないけど、座る席が無いのだから仕方がない。
聞こえてくるのは、中庭で雷に打たれた生徒の話ばかりだ。
私とドロシーは、ティーカップに紅茶を注ぎ、学生証を提示して、それぞれに会計を済ませる。
「あっ。あのテーブル、椅子が二つ空いてるよ」
ドロシーはそう言って歩き出した。私も、ドロシーの後に続く。
相席をすれば、もしかしたら友達が増えるかもしれない。
そろそろ、ドロシー以外の女友達も欲しいと思っていたんだよね。
本当は『刺繍』の授業で友達を作りたかったけれど、私はいつまでも単位が取れず、先にいた生徒も後から授業を受けに来た生徒も、皆、単位を取って去ってしまうんだよ……。
「あの、すみません。あたしたち、空いている席に座ってもいい?」
ドロシーが、二つ空いている椅子があるテーブルに座っていた女子生徒たちに声を掛け、尋ねた。
テーブルに座っていた女子生徒たちは一斉に、ドロシーと私に視線を向ける。怖い。
栗色の髪に水色の目をしたボーイッシュな女子生徒が口を開いた。
「その席はレオナ様のお姉さまのために空けてあるから、申し訳ないけれどお断りするよ」
「あら、もういいのよ。エドナ様。ずいぶん待ったけれど、お姉さまは戻られないのだから、きっと、何か用事があるのね。もしかしたら王女殿下が雷に打たれた件でお忙しいのかもしれないわ」
ボーイッシュな女子生徒に、紺色の髪と目の女子生徒が言った。
紺色の髪と目の彼女は、私の部屋を訪ねてきた女子生徒にどことなく似ている気がする……。
「あなた、入学式でお隣に座っていらした子よね」
「えっ?」
「そうです。そうだよね? リア」
紺色の髪と目の女子生徒の言葉に戸惑う私を置き去りにして、ドロシーはぐいぐい話を進めていく。
話を進めながら、ちゃっかり空いている椅子の一つに座ってしまった。
「私たち、座っても大丈夫ですか……?」
「ええ、どうぞ。皆さんも、宜しいですわよね」
「レオナ様がそれでいいなら」
ボーイッシュな女子生徒がそう言うと、テーブルを囲んでいた女子生徒たちはそれぞれに肯く。
この女子生徒の集団のカースト最上位は、紺色の髪と目の『レオナ様』のようだ。覚えておこう。
私はレオナや女子生徒たちにお礼を言って、空いている席に座った。
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