第40話 リア・クラークがネルシア学院に入学してから12日が経過して『刺繍』の授業に四苦八苦する

私がネルシア学院に入学してから12日が経過した。

注意深く行動しているせいか、王子様から注意を受けたせいか、迷惑少年『おおのしょう』の私への接触はない。よかった。


『夜目』スキルは一日で取得できたけれど、それ以降、新しいスキルは増えていない。

新しいスキルが増えない理由は、私が取得したいスキルが、すごく贅沢な要素満載だからだと思う。

何日掛かっても、延々、スキルが得られるように頑張るつもりだ。


私が新たに取得したいスキルは『空間収納』だ。

単なる『収納』スキルであれば、整理整頓を頑張っていれば自然に取得できることもあるらしいが『空間収納』になると、取得するのが格段に難しくなるらしい。


私は!!

容量無制限で!!

熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままで収納できて!!

生き物も入れられる『空間収納』スキルが欲しい……!!


私は将来『クラーク商会』を継ぐのだから『空間収納』スキルはすごく役に立つはずだ。

欲しい!! 絶対に『空間収納』スキルが欲しい……!!


そう思い続け、願い続けて、口に出してみたり、紙に思いの丈を書きまくったりしているが、私が得たい『空間収納』は、まだスキルボードに刻まれていない。

私のスキルボードの記載は以下の通りだ。


異世界の記憶 → 読書 → 清潔 → 夜目


スキルの数が少ない。寂しい……。


授業の単位は順調に取れていて『ネルシア初級語』と『足し算/引き算』の単位は『優』を取った。

それで私は『Ⅰー1 基礎クラス』を卒業して『Ⅰー2 初級クラス』に移籍した。


『Ⅰー2 初級クラス』では自由に授業を選ぶことができるので、私は『刺繍』の授業を受けている。

でも『リア・クラーク』は不器用なようで、苦戦しているのだ。

仕方ないよね。まだ6歳だし……。


私に続いて『Ⅰー1 基礎クラス』を卒業したドロシーも一時期同じ『刺繍』の授業を受けていたのだが『可』の評価を貰って卒業した。

私は『不可』だ。こうなったら刺繍の授業で『優』を取るまで頑張りたい。


そんなわけで、授業終了後の夕方、ネルシア学院女子寮の自分の部屋にこもって、頑張って刺繍の練習をしている。

『空間収納』スキルじゃなくて『刺繍』のスキルとか、手先が器用になる系のスキルの取得を目指した方がよかったのかもしれない……。


ため息を吐き、四苦八苦しながら玉止めをして刺繍糸を切る。

針を針山に刺したその時、ドクンと一度、鼓動が鳴った。

気持ち悪い。嫌な予感が膨れ上がる。

これは、なに……っ!?


居ても立ってもいられず、私は部屋を飛び出した。


「リアさん、どうしたんですか?」


シーツを入れたカゴを持ち、廊下を歩いて来た世話係のクロエが私に問いかける。


「クロエさん……」


「リアさん、顔色が悪いわ。具合がよくないの?」


「わかりません。さっきから、なんだかドキドキして……」


「そうなの? お医者様に連絡した方がいいかしら」


クロエがそう言った直後に轟音が響いた。

私とクロエはおそろしくて耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込む。

この轟音は、落雷……っ!?

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