第39話 リア・クラークはドロシーとライナス、ダレルの『ネルシア初級語』の小テストの結果を知る
私が教室に戻ると、ドロシーとライナスが歩み寄ってきた。
「リア。『すごく良い』を貰うなんてすごいね……っ」
「リアは小さいのに、たくさん勉強したんだな」
ドロシーとライナスに褒められ、私は照れた。
『井上愛子』として日本で生きていた時には、友達からこんな風に褒められたことは数えるほどしかなかった気がする。
「ドロシーとライナスは小テストの結果、どうだった?」
私はドロシーとライナスに尋ねる。
「あたしとライナスは『普通』だったの。それで、もう一回小テストを受け直すかどうか迷ってる」
ドロシーの言葉にライナスが肯き、口を開く。
「もう一回テストを受けて『ダメ』だったら嫌だから、このままでいいかとも思うんだけどさ」
確かに、一回うまく行ったことが二回目にもうまくいくとは限らない。
小テストの問題が、一回目に受けたのとまったく同じだったら、点数がよくなるかもしれないけど、全然違う問題が出たら結果が悪くなることも考えられる。
「ダレルは? ダレルも『普通』だったの?」
私が問いかけると、ドロシーとライナスは揃って首を横に振る。
ダレルの席に視線を向けると、机に突っ伏したまま動かないダレルがいた。
『不可』だったようだ。午後の授業で頑張れ、ダレル……。
「三時間目の授業、ドロシーやライナスと一緒だと嬉しいけど……。でも、私たち三人が一緒だとダレルがひとりぼっちになっちゃうね……」
私の言葉を聞いたドロシーとライナスは机に突っ伏しているダレルに視線を向ける。
友達に合わせて小テストを受け直す……というのは子どもならではの選択ではないかと思う。
私は、一人でも三時間目の授業を受けるつもりだけど……。
「あたしはリアと一緒に三時間目の授業を受ける。もう一回テストをやるなんて嫌だもの」
「ボクは……」
ライナスは言い淀み、ため息を吐いた。
「ボクはダレルと二回目の小テストを受けるよ。ダレルにそう言ってくる」
ライナスはダレルを見捨てられなかったみたい。優しい。
ライナスがダレルの席に向かったその時、二時間目の授業終了のチャイムが鳴った。
「『ネルシア初級語』の評価が『すごく良い/良い/普通』だった生徒で、結果に納得している生徒だけ教室に残るように。評価が『ダメ』だった生徒と評価に納得していない生徒は教室を出て、昼飯を食べた後に午後の授業を受けに教室に来るように。じゃあ、解散」
ホーランド先生はそう言って教室を出て行った。
教室を出て行く生徒もいるし、教室に残る生徒もいる。
「リア。あたし、トイレに行きたいんだけど一緒に行かない?」
「うん。いいよ」
私はドロシーに肯き、二人で教室を出た。
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