第38話 リア・クラークは図書館で『スキル一覧』という本を読み『夜目』スキルを見つける
目の前の書架に『スキルイチラン』という背表紙の本と『スキル一覧』という背表紙の本がある。
『ネルシア初級語』の授業……カタカナしか習っていない私は『スキルイチラン』という背表紙の本を手にするべきだろうか。
でもカタカナばっかりで書かれた文章とか読みにくいよね……。
私は書架の周囲を窺い、自分しかいないことを確認して『スキル一覧』と書かれた背表紙の本を手に取った。
そして図書館内に点在している、座り心地の良さそうな椅子に座って本を開く。
『スキル一覧』はカタカナ、ひらがな、漢字を使って書かれた本だった。
そういえば、私のスキルボードもカタカナ、ひらがな、漢字を使って書かれているんだけど、他の人のスキルボードってどんな風に表示されているんだろう。
転生前の日本人の記憶があるからスキルボードに『日本語』が表示されているような気もする。
自分のスキルボードしか見られないから、この謎が解ける日は来ないかもしれない……。
「あ、このスキル、欲しいかも」
私は『夜目』と書かれたスキルに目を留めて呟く。
寮の部屋にはベッドにランプが置かれていて、持ち運びもできるし、スイッチに触れるだけで明るくなるので使い勝手もいいのだが、使いすぎると『充填』というものをしなければいけないと世話係のクロエに教えてもらった。
『充填』する時には私の学生証が必要になるんだって。
一回の『充填』で銀貨5枚程度だと言われた。
だから、節約思考の生徒はランプを使わなくて済むように、夜更かししないですぐに寝るそうだ。
日の出と共に起きて、日の入りと共に眠る。
めちゃくちゃエコな暮らしだ。スマホも娯楽の本もないから、夜更かしをしてもやること無いし……。
ネルシア学院って結構お金が必要だよね……。
食事は無料じゃないし。
『夜目』スキルは暗い場所でも、視界が良好になるスキルと書いてある。
ランプ代を節約できそうなスキル『夜目』の取得を目指すのはいいことだと思う。
私『夜目』スキルが欲しい!!
私は『夜目』のスキル内容を暗記するために読み込む。
私の数少ないスキル『読書』が仕事をしてくれていると信じよう。
『夜目』のスキル内容を暗記し終えた私は、本のページを閉じて立ち上がる。
そろそろ教室に戻ろう。三時間目の授業をきちんと受けないといけないし……。
『スキル一覧』の本を書架に戻した私は、図書館入り口のカウンターに向かう。
カウンターにいた図書館職員が、私に気づいて微笑み、口を開いた。
「お探しの本は見つかりましたか?」
「はい。本がある場所を教えてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。図書館を退出する場合は『真偽の小月水晶』に触れてください」
図書館職員の言葉に肯き、私はカウンターに置いてある『真偽の小月水晶』に触れた。
……光らない。よかった。
図書館職員は『真偽の小月水晶』の状態を確認して、私が預けた学生証を差し出す。
私が図書館に来た時に対応してくれた職員だから、迷わずに私の学生証を手にできたのだと思う。
「『リア・クラーク』さんで間違いないですね?」
「はい。間違いないです」
名前を確認されて肯くと、学生証を返却してもらえた。
なくさないように、学生証をすぐに制服のポケットに入れる。
それから、私は図書館職員に会釈して、図書館を出た。
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