第36話 リア・クラークは採点された『ネルシアショキュウゴ』の答案用紙を受け取る
二時間目の授業中、私はホーランド先生に言われた通り、黙々と自習をしている。
カタカナではなく『ネルシアショキュウガクシュウキョウホン』に記載された、足し算と引き算の問題を解いていた。
こちらの世界でも、数字は日本と同じで『足し算』と『引き算』という言葉も教本に記載されている。
日本の小学校を卒業した『井上愛子』の記憶を持つ私には、楽勝だ……!!
一桁の足し算と引き算だから、簡単なんだけどね。
二桁以上の足し算と引き算になると、ひっ算とか使わないとできないと思う。
私、暗算とか苦手なの……。
暗算できる人、本当にすごいと思う。尊敬する。
「小テストの採点が終わったから、答案返すぞ。名前を呼ばれた生徒は前に出てきて答案と単位……『すごく良い/良い/普通』という判定を書いた紙を渡すから受け取るように。答案に名前を書き忘れた答案は『ダメ』だからな。テストが返って来なかった生徒は昼飯後の授業に出席するように。『すごく良い/良い/普通』の結果に納得した生徒は三時間目の『足し算』と『引き算』の授業を受けることができる」
ネルシア学院では、名前を書き忘れると0点になってしまうのかもしれない。
私は、ちゃんと名前を書いているはず。大丈夫。
転生してから初めてのテストに緊張しながら、名前を呼ばれるのを待つ。
今の私は『井上愛子』ではなく『リア・クラーク』だ。間違えないようにしないといけない。
ホーランド先生は二つに分けた答案用紙の束のうちの片方を手にして、口を開いた。
「リア・クラーク」
「はいっ」
私は一番最初に名前を呼ばれるとは思っていなくてびっくりしながら、返事をして席を立つ。
これで結果が『不可』だったら、めちゃくちゃへこむんですけど……。
私は緊張しながら教卓の前に立ち、ホーランド先生が差し出した答案用紙を受け取る。
おそるおそる答案用紙を見ると、満点だった!!
よかった……。
「これが単位……クラークの結果だ。受け取れ。ネルシア上級語で書いたから読めないか。その字は『すごく良い』という意味だ」
私は単位が書かれた紙を見た。
『優』となっている。
嬉しい!!
「クラークは『ネルシア初級語』の授業は卒業……もう出なくていい。次は『足し算』と『引き算』の授業になる。『足し算』と『引き算』の授業は毎日三時間目にこの教室で行うから、出席するように」
「はい」
「それにしても、入試の結果で振り分けられて基礎クラスに入ったのに、一時間目の授業を受けただけで『ネルシア初級語』の単位を取るなんて驚いた。入試の後、相当勉強したんだな」
ホーランド先生は私に微笑んで言う。
全然勉強してません……。
中学校の授業は、それなりに真面目に受けてたけど……。
「クラークは三時間目まで自習してもいいし、教室を出てもいい。好きにしなさい。それじゃ、次は……」
ホーランド先生が、別の生徒の答案用紙に目を落としたのを見て、私は自分の席に戻った。
教室を出てもいいって言われたけど、どうしよう……?
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