第35話 リア・クラークは二時間目の授業中、自習をしながら小テストの採点が終わるのを待つ

「ドロシー、リア」


私とドロシーに声を掛けてきたのは、ドロシーと同じネル村出身の少年、ライナスだ。彼も小テストの答案を提出し終えたみたい。


「ライナス。小テストどうだった?」


ドロシーが私から視線を外し、ライナスに目を向けて言う。

私はドロシーのアホの子を見るような視線から解放されて、ほっとして息を吐いた。

ドロシーと視線を合わせ、ライナスは苦笑して口を開く。


「全然ダメ。半分くらいしか答えを書けなかった」


「あたしも似たような感じ。それでね、今、リアと話をしていたんだけど、リアって王家の人が神様の末裔って知らなかったんだよ……っ」


その話、まだ続くの!?

私は、ライナスにもアホの子を見るような視線を向けられることになるのかと思って憂鬱になる。

ひょろっとして背が高いライナスは、背が低い私の頭を優しく撫でて微笑み、口を開いた。


「リアはまだ小さいんだから、難しいことを知らなくても仕方ないよ。これから覚えていけばいい」


「そうね。そうよね」


私はライナスとドロシーに温かいまなざしを向けられ、気まずくて首を竦めた。

難しいことを知らないと思われているけど、私、たぶんさっきの『ネルシアショキュウゴ』の小テスト、満点だと思うよ……。


ライナスとドロシーが小テストの話題で盛り上がり、私が相槌を打ちながら二人の話を聞いているとチャイムが鳴る音がした。

一時間目の授業が終わったようだ。

教室の扉から『Ⅰー1 基礎クラス』の担任のホーランド先生が出てきた。

トイレに行くのかな? 次の授業の準備をしに行ったのかもしれない。


「あーっ!! テストの答え、わかんねー!!」


叫びながら、髪の毛を掻き毟りながら、ダレルが教室から出てきた。

ダレルはお喋りをして、授業を真面目に聞いてなかったのが敗因だと思う。

ダレルが私たちに合流し、小テストが終わった教室に入り、お喋りをしていると二時間目開始のチャイムが鳴り、チャイムの音と同時にホーランド先生が教室に入ってきた。

教室内の生徒たちは慌てて自分の席に着き、姿勢をただす。

ホーランド先生は、教卓の前に立ち、口を開いた。


「二時間目は一時間目の授業内容の自習にする。先生は今から、一時間目に行った小テストの採点をするので、それが終わり次第、答案を返す。答案を返す時に『優/良/可』か『不可』という……『すごく良い/良い/普通』か『ダメ』かという結果を書いた紙を渡す」


ホーランド先生の言葉に、教室にいる生徒たちからブーイングが起こる。

小テストの結果に自信が無い生徒が多いようだ。


「先生、ダメだったらどうなんの!?」


ブーイングの中、ひと際大きな声でダレルが質問した。

ダレルの質問の答えが気になるのか、生徒たちのブーイングの声が静まった。

私も気になる。『不可』なら、どうなるんだろう?

ホーランド先生は教室内を見回し、口を開いた。


「『ダメ』だったら、今日の昼休憩……昼飯を食べた後の授業でもう一度、一時間目と同じ内容の授業を受けて、同じ内容の小テストを受けてもらう。それは『すごく良い/良い/普通』という判定結果に不満を持った生徒も同じだ」


へえー。小テストの結果による成績が気に入らなければやり直しができるんだ。

親切なシステムな気がする。

『優』を取るために何度も粘ることもできるんだね。

その代わり、受けられる授業の回数とか減っちゃうかもしれないけど……。


「では自習を始めてください。先生は採点をするから騒がないように」


ホーランド先生はダレルの顔を見てそう言った後、採点作業に入る。

先生も、一時間目の授業中、ダレルのお喋りがうるさかったんだね……。

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