第34話 リア・クラークは『ネルシアショキュウゴ』の小テストの答案用紙を提出し終えて廊下に出て、ドロシーと『王子様』の話をする
『ネルシアショキュウゴ』の小テストの答案用紙を提出し終えた私は、教科書等を自分の手提げ鞄にしまって教室を出た。
テストが終わると、清々しい気持ちになる。
廊下で伸びをしていると、先に教室を出ていた女子生徒数人に取り囲まれた。
「王子様の話、聞かせてっ」
「王子様と何話したのっ? 自己紹介とかした!?」
その話、まだ続くの!?
察するに、王子様ってめちゃくちゃ美形な銀色の髪に紫色の目の男子生徒のことだよね。
彼は私のことを庇うために話しかけてくれたっぽいとは思うんだけど、自己紹介とかはしていない。
そして今、めちゃくちゃ勢いよく話しかけてきている女子生徒たちの名前すら知らないんですけど。
私たちが、自己紹介必要じゃない……?
「別に話はしてないよ。自己紹介もしてない」
私が正直にそう言うと、彼女たちはがっかりした顔をして離れていった。
寂しい……。王子様の話題にしか興味無かったんだね……。
「リア。テストどうだった? あたしはあんまり自信が無いの」
教室から出てきたドロシーが私に話しかけてくる。
ドロシー、優しい!! 嬉しい……!!
「今回の小テストがダメでもまた頑張ればいいよ」
「うん。そうだね。あ、そうだ。リア、王子様のこと聞かせてよ」
ドロシーも王子様が気になるんだね……。
私は皆が、あの美少年を王子様と断定していることが気になるよ。
この世界の王族って、そんなに庶民に顔とか知られてるの?
王族の写真とか、庶民の間に出回ってるの……?
「別に、話とかしてないよ。っていうか、皆、なんであの美形な男子のこと『王子様』ってわかったの?」
私がそう言うと、ドロシーは目を丸くして私を凝視した。
瞬きしないと、目、痛くなるよ。ドロシー。
そして、ドロシーは深々とため息を吐き、口を開く。
「リアはまだ小さいから王家の人の特徴とか知らなかったんだね」
私はドロシーより背が低いけど、でもそんなに年齢変わらないんじゃない?
『リア・クラーク』は勉強嫌いでわがまま三昧のお嬢様だったから、ドロシーが言った『王家の人の特徴』を知らなかったのかもしれない。
「あのね、王家の人は全員銀色の髪に紫色の目をしているんだよ。銀色の髪の人もいるし、紫色の目をした人もいるけど、でも『銀色の髪に紫色の目』の人は王家の人だけなんだよ」
「そうなんだ。知らなかった」
めちゃくちゃ美形なのは王子様だったからなのか。
『井上愛子』の記憶では日本の皇族って全然美形ではなかったので、王族が美形なのは良いことのような気がする。
「リア、感動しないの? 神様の末裔に会ったのに」
「神様の末裔? なにそれ?」
首を傾げる私に向けられたのは、ドロシーのアホの子を見るような視線だった……。
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