第33話 リア・クラークは『Ⅰー1 基礎クラス』の初授業で『ネルシアショキュウゴ』の小テストを受ける

『Ⅰー1 基礎クラス』の初授業はカタカナの授業だった。

背が低い私は廊下側の一番前の席に座って授業を受けた。

ダレルがお喋りをしている声がうるさい。でも、『Ⅰー1 基礎クラス』の担任であるホーランド先生はダレルを注意しなかった。

なんで? 授業中、お喋りしていても注意されないのに、私、授業前に席に着いてなくて注意されたんですけど……。


『ネルシアショキュウガクシュウキョウホン』でカタカナ、こちらの世界の言葉で『ネルシアショキュウゴ』を学ぶ。

『ネルシアショキュウゴ』というのは『ネルシア初級語』ということだと思う。

『ネルシア初級語』は、本当、普通にカタカナなので、日本の義務教育を受けた私には余裕だ。


日本の小学校一年生程度の授業を、中学一年生の記憶を持った私が受けるのだから、簡単で当然なんだけど、でも私って天才と内心で自慢してしまう。

優秀な生徒は『Ⅰー1 基礎クラス』に振り分けられることはなく、もっと上のクラスで授業を受けていることを、この時の私は知らない……。


『Ⅰー1 基礎クラス』の教室には寮の私の部屋と似たような時計が設置されている。

授業開始から30分程度経った頃、習熟度を判定するための小テストの用紙が配られた。

テスト……。この世界にもあるんだよね。嫌だ……。

なんで人は、人と比べたがるんだろうね。

今は美少女な『リア・クラーク』だから容姿で比べられても胸を張っていられる気がするけど。

でも私は人をなるべく見た目で決めつけないように気をつけたい。

見た目まあまあ美形な迷惑少年の例もあることだし……。


小テストは『ネルシアショキュウガクシュウキョウホン』に書かれていた内容の抜粋だった。

テストの問題用紙には『コノエハナンデショウ? ナマエヲ『ネルシアショキュウゴ』デカイテクダサイ』と記載されている。

全部カタカナばっかりの文章、めちゃくちゃ読みにくい。

私は答えを間違えないように、テストの解答用紙の解答欄に記載していく。

あっ。自分の名前もちゃんと書かないとね。

私は『ネルシアショキュウゴ』で名前の記載欄に『リア・クラーク』と書いた。

ネルシア学院って、名前書き忘れたらテスト0点ルールとかってあるのかなあ……?


私がテスト用紙に名前を書いて、解答欄をすべて埋め、見直しをして顔を上げた。

教室内にいる生徒の何人かはホーランド先生にテストの解答用紙を提出している。

ホーランド先生は受け取ったテストの解答用紙を伏せて教卓に置き、その場で採点を始めた。

私もテストの解答用紙を提出しようと立ち上がる。

この小テスト、何点取ればいいんだろうなあ。たぶん、私は満点取れると思うんだけど……。


「小テストの答案用紙を提出したら、次の授業が始まるまで休み時間にしていいぞ」


ホーランド先生は小テストの採点をしながら言った。

小テストの答案用紙を提出した後、席に戻っていた生徒たちからはブーイングが起こる。


「先生、そういうことはもっと早く言ってよー!!」


「待ってて損した」


生徒たちの愚痴を聞きながら、私は内心で彼らに同意した。

ホーランド先生って本当、めちゃくちゃ雑な性格だよね。

採点ミスとかあるかもしれないから、自分でも採点済みの答案用紙をきちんと確認しよう……。

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