第30話 リア・クラークはお手洗いに行き、食堂に行った直後に学生証を忘れたことに気づいて部屋に戻る

クロエとお喋りをしているうちに時間が過ぎ、食堂が開く時間になった。

クロエと一緒に部屋を出た私は、首から下げている鍵を使って部屋に鍵をかけ、食堂に向かう。


「リアさん。朝ご飯を食べる前に『お手洗い』に行く?」


「行きたいです」


朝起きてから、全然トイレとか行ってない。

部屋にトイレついてたら便利なのになあ……。

ユニットバスでいいからお風呂も欲しい。

寝る前に、身体や髪に世話係のクロエに『清潔』スキルを使ってもらえるから綺麗だとは思うんだけど……。


女の子同士、連れ立ってトイレ……お手洗いに行き、私は前回同様にウェットティッシュのようなもので手を拭き、ゴミ箱に捨てた。

ようやくハンカチに『清潔』スキルを使った怠さが抜けてきたっぽいのに、手を綺麗にして疲労感を感じたくない。

朝ご飯は怠すぎる状態で食べたくない。おいしく食べたい。


お手洗いを済ませた私とクロエは食堂に入る。

今朝のメニューはなんだろう?


「リアさん。学生証は持ってきてるわよね?」


「あっ。忘れました……っ」


たぶん、寮の私の部屋の机の引き出しに入っていると思う。


「学生証、取ってきますねっ」


「じゃあ、わたしは列に並んでるわね」


「はあいっ」


私は駆け足で食堂を出て、寮の自分の部屋に向かう。


部屋の鍵を開け、机の引き出しから学生証を取り出して制服のブレザーのポケットにしまう。

学生証はいつも持ち歩くように気をつけよう。

私は部屋を出て施錠し、食堂に向かった。


食堂に入ると、列に並んでいたクロエから手招きされる。


「リアさん、こっちよ……っ」


木のトレイを持って列の最後尾に並ぼうとしていた私はクロエの元に向かった。


「クロエさん。学生証、取ってきました」


「お疲れさま。さあ、列に入って」


「えっ!? 横入りとかしていいんですか?」


「一人なら大丈夫よ。お手洗いに行きたくなって、列を離れることがあるからね」


クロエの言葉に、私は納得した。

テーマパークのアトラクションに乗るための長蛇の列から離脱して、また戻るようなものだと理解する。


今朝は、昨日とは違ってパンが入ったカゴがなく、パンケーキが並んだ角バットが置いてある。

焼いたベーコンが入った角バット、ほうれん草のソテーらしきものが入ったものや、フルーツを切ったものが盛り付けられている角バッドもある。


「今朝はパンケーキね。嬉しい」


クロエがメニューを見て嬉しそうに微笑む。

こちらの世界でも『パンケーキ』という言葉は使えるようだ。

パンケーキに何を乗せようかな。生クリームはあるのだろうか。

日本のカフェパンケーキのように、そびえたつ生クリームとかやってみたい。……怒られるかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る