第29話 リア・クラークは『清潔』スキルを自分のハンカチに使って怠くなり、クロエから『単位』と『履修』の話を聞く

「リアさん、おはようございます。一人で起きられるなんて偉いですね。予習をしていたんですか?」


クロエは私が脱いだパジャマに『清潔』スキルをかけて畳み、クローゼットにしまう。

『清潔』スキルを取得したんだから、私が自分でパジャマを綺麗にすればよかった。

私は机の上に広げていた教科書やノート、筆記用具を手避け鞄にしまった。

そうだ。手避け鞄に入れっぱなしにしているハンカチに『清潔』スキルを使ってみよう。


「条件指定『私が手に持っているハンカチ』スキル発動『清潔』」


手避け鞄からハンカチを取り出し、以前クロエや母親が清潔スキルを使っているところを思い浮かべながら、私は言った。

身体、めちゃくちゃ重くなったんですけど……っ!!

手にしたハンカチは綺麗になったのかそうでないのか、見た目ではわからない。

元々、四角く綺麗に畳まれていたから……。

でも、ハンカチの皺とかなくなっている気がする。

『清潔』スキル発動したよね? だから私、こんなに身体が重いんだよね……?


「リアさん、さっそく『清潔』スキルを取得したんですね。おめでとうございます」


「ありがとうございます。でも、ちゃんと『清潔』になってるのとかわからなくて……」


「スキル発動後に身体が疲れたり怠くなったりしたら、きちんと発動していますよ。スキルが不発だった場合も、なんとなくわかります。身体の怠さや疲れはそれほどでもないのに、なんだか嫌な感じがするんです。スキル不発って」


「そうなんですね……」


クロエの説明を聞いた私は一応肯いておいたけれど、全然納得できないんですけど。

なにそのアバウトな感じ。

ああ、身体が怠い。もう一回寝たい。

『清潔』スキルを一回使うたびにこの怠さが襲ってくるとか嫌だ……。

私はベッドに座って項垂れる。


「スキルは使い慣れたら怠さは軽減されるわよ。わたしは今は『清潔』スキルを何度使っても全然元気」


そう言って笑うクロエに聞きたい。

その境地に至るまでに『清潔』スキルを何回使えばいいの……?

でも聞いてしまったら、それはそれでうんざりしそう。


「リアさん。授業を受ける準備はできていますか? 教科書とノート、筆記用具を忘れずに持っていく鞄に入れてください。忘れてしまっても、寮の部屋に取りに戻ればいいんですけどね」


緩いな。ネルシア学院。

クロエの言葉を聞いて、私は内心で突っ込んだ。

『井上愛子』が通っていた小学校も中学校も、忘れ物をしたら家族に届けてもらうしかなかった。

体操着とか、忘れると大変だった。


「授業って遅刻とかしてもいいんですか?」


「褒められたことではないけれど、でも強くとがめられることもないわ。授業内容を理解して『優』『良』『可』のどれかを貰えばネルシア学院の卒業に必要な『単位』が貰えるの。リアさんがこれから受ける『ネルシア初級学習』の単位は、絶対に取得しないといけない物なのよ。『ネルシア初級学習』の単位を取ったら、その後は自分に必要な授業や興味がある授業を『履修』していくの」


「りしゅう……」


クロエの説明は、私にはよくわからないところもあったけれど、とりあえず授業を真面目に受けて、先生から合格を貰えばオッケーっぽいと理解した。

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