第23話 リア・クラークは教室でローランドに詰め寄られて怯える

ダレルとドロシー、ライナスとお喋りをしていると教室に少年が二人、入ってきた。

焦げ茶色の髪と目をした精悍な顔立ちの少年と金髪で青い目の、見覚えがある顔の少年だ。

金髪で青い目の方、どこで見たんだっけ……?


「リア。あの人たち、カッコいいよね」


ドロシーが教室に入ってきた少年たちに視線を向けて、小声で言った。

カッコいいと言われたら、カッコいい範疇の容姿だと思ったので、私はドロシーの言葉に肯く。

私が肯くとダレルとライナスが不機嫌な顔をした。


「あんな奴ら、別にたいしてカッコよくなくね? リアは趣味わりーな」


「ダレル、声が大きい……っ」


暴言を吐くダレルを、ライナスが慌てて諫める。

だが時すでに遅く、ダレルの言葉が少年たちの耳に入ってしまったようだ。

金髪で青い目の少年はダレルに視線を向け、ダレルに……じゃなくて、私に歩み寄ってきた。

なんで!? 私、何も言ってないけど!!


「リアって呼ばれてたよな。お前『いのうえあいこ』か?」


見覚えのある金髪で青い目の少年が、私の目の前に立って言う。

『井上愛子』という名前を告げられたことにびっくりして凍り付いていると、ダレルとライナスが私を守るように前に進み出る。

ドロシーが、私を励ますように寄り添ってくれた。


「お前、いきなりなんなんだよ!!」


金髪で青い目の少年に、ダレルが噛みつくように言う。

焦げ茶色の髪と目をした少年が私を見つめて口を開いた。


「ローランド様。こちらの少女がお探しの人物なのですか?」


「俺が探しているのは『リア・クラーク』だ。『大野翔』という名前、聞いたことあるだろう? 同じクラスだった。俺はお前を探して、あの本を読んで、こんなことになったんだ……っ」


私は金髪で青い目の少年の言葉を聞いて、怯えた。

この世界に転生したのは、私だけじゃない……?

『井上愛子』だった私は『リア・クラーク』として生き、美少女フェイスとスキルがあるこの世界を謳歌しようと思っている。

でも、目の前にいるこの人は違うの……?

『おおのしょう』は『井上愛子』だった私のせいでここにいると主張している。

『井上愛子』を責めているようで、すごく怖い。

どうしよう。どう答えたらいいんだろう。私は『リア・クラーク』として生きて行きたいのに……。


「これ以上わけのわからないことを言って脅すなら、先生を呼ぶぞ……っ」


ライナスが震える声で、それでも少年たちを睨みながら言う。

教室に残っていた生徒たちが、言い合いを遠巻きに見ている。

焦げ茶色の髪と目をした精悍な顔立ちの少年は、教室内の様子を見て取り、口を開いた。


「ローランド様。年下の子どもたちを脅すようなことをすると、学院から処罰されるかもしれない。いったん引きましょう」


「止めるな、レックス!! 俺は帰りたいんだ……っ!!」


「ネルシア学院に入学したら、卒業するか退学処分になるまでは学院を出られない。今のあなたに帰る場所はないんですよ。それは家を出た時に、わかっていましたよね?」


「……っ!!」


「とにかくお前ら、教室から出て行け!!」


ダレルの言葉に、ローランドを諫めたカークは頭を下げ、口を開いた。


「驚かせてすまない。ローランド様は連れて行く。ローランド様、行きましょう」


カークはローランドの腕を取り、強引に教室から連れ出した。

ローランドは、カークに対して強く抵抗しなかった。

突然の乱入者たちが教室を出て、一気に教室内がざわつく。


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