第22話 リア・クラークは教室でダレル・ワイリーと知り合い、彼の友達二人を紹介してもらう

『Ⅰー1 基礎クラス』の担任であるホーランド先生は、スキル取得の説明を終えて、教室を出て行った。

私は教室を見回し、友達を作ろうと試みる。

せっかく転生して可愛い容姿になったのだから、友達と楽しく学院生活を送りたい。


私の斜め後ろに座っている少年と目が合った。

彼の席の側にはややふっくらした体形の少女が一人、背の高い少年が一人、立っている。

どこかで見たような顔だ。

……あ。食堂で見かけた、プリンを何個も取ってた子かも。


目が合った少年は椅子から立ち上がり、私の方に歩いてくる。


「こんにちは。初めまして」


私は『リア・クラーク』の美少女フェイスをフル活用しようと、彼に微笑む。

少年は明るい笑顔を浮かべて口を開いた。


「オレはダレル・ワイリー。ネルシア王国の東のはずれにあるネル村から来たんだ。オレの席にいる二人も同じ村の奴らなんだぜ」


「そうなの。お友達と一緒に入学できていいわね。私はリア・クラークよ」


転生してすぐに学院に入学したので、今、『リア・クラーク』が住んでいる場所はよくわからない。だから、私は彼に名前だけを伝える。

ダレルの席の側に立っていた二人が、私たちの方に歩いて来た。


「ドロシー、ライナス。こいつ、リア・クラークだって」


ダレルは歩み寄ってきた彼らに気安い口調でそう言って、私に視線を向けて口を開いた。


「リア。のっぽの男がライナスで、太っちょな女がドロシーだ」


ダレルに『太っちょ』と言われた瞬間、ドロシーの顔が歪んだ。

私は『可愛い女の子』ではなかった『井上愛子』時代を思い出した。

『太っちょ』と言われて嬉しい女の子はいないはずだ。なんとかドロシーをフォローしようと口を開く。


「茶色の目が可愛い女の子がドロシーで、背が高くて頼りになりそうな男の子がライナスね。初めまして。仲良くしてもらえると嬉しいわ」


私がそう言って微笑むとドロシーはほっとしたように微笑み、ライナスは照れくさそうに顔を赤くした。


「ドロシーは別に可愛くなんかないし、ライナスはひょろっとして頼りないだろ」


ダレルが文句を言っているが、スルーする。


「よろしく。えっと、リアって呼んでいいのかな……?」


ライナスが小さな声で言う。


「もちろん、そう呼んで。私もあなたたちの名前を呼んでもいい?」


「ボクはいいよ」


「あたしも、ドロシーって呼んで。……あたしの目を可愛いって言ってくれてありがとう。目が小さいことが嫌だったけど、リアが褒めてくれたから今日からはちょっとだけ自分の目を好きになれそう」


ドロシーは嬉しそうに言う。

ドロシーが、デリカシーが無いダレルの言葉に傷ついたままじゃなくてよかった。

腫れぼったい一重の瞼がコンプレックスだった『井上愛子』だった時、私も親以外の誰かに『可愛い』って言われてみたかったな。

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